実践!事業承継・自社株対策
自己株式購入は、配当金?【実践!事業承継・自社株対策】第2号
2019.02.08
おはようございます。税理士の北岡修一です。
自社株に関して最近多い相談は、自己株式の買取りについてです。
退職した社員や役員が持っている株式、経営に関与していない親族が持っている株式などを、買い取って欲しい、というようなケースです。
経営者やその親族が買い取る場合は、原則的な評価(一般的に価格が高くなる)で買い取らなければ、課税問題が発生しますので、なかなか買い取ることができません。
非上場株式は、買い取る人によって、買い取る価格(評価額)が変わってくるのです。この辺りは、おいおい書いていきたいと思います。
そこで、資金も豊富な会社で自社の株式を買い取れないか、という話が出てくることがよくあります。
過去においては、自己株式は自社が自社の株主になり、自己資本を食いつぶしていく行為、等の理由で禁止されていた時期があります。
現在では、自己株式を購入することは問題なく、購入した場合は、自己資本(純資産の部)のマイナス項目として表示することになっています。
そこで自己株式を買取る際には、それは配当金になりますよ、と言うと、結構皆様ビックリされます。
何で自己株式の買取りが配当金なの? ということですね。
でも、考えてみれば納得できるのではないでしょうか?
自己株式の買取りは、言ってみれば資本の払い戻しです。
単に株式を買うのではなく、株式を発行している会社が買い取るのですから、資本を払い戻すことと同じです。
では、この資本は何から構成されているでしょうか?
貸借対照表の自己資本(純資産の部)を見ていただけばわかるように、資本は大きくわけて、資本金と利益剰余金からなっています。
資本剰余金がある場合もありますが、これは資本金と同類のものです。
資本金は株主の出したものですから、そのまま払戻し、ということですね。
利益剰余金は何かというと、過去の利益で内部留保したものの累積です。ですから名前のとおり、利益からできています。
自己株式の買取りは、資本の払い戻しであり、その資本は資本金と利益剰余金からできているわけですから、利益からできている利益剰余金の部分は、利益の払戻し=配当金ということになるのです。
まとめると、自己株式の買取り金のうち、資本金部分は資本の払戻し(税務上は譲渡)、利益剰余金部分は配当金となるわけです。
自己株式の買取り金は、税務上は2つにわけて計算することになります。また、この配当金のことを「みなし配当」と呼んでいます。
さらに、忘れていけないのは、配当金ですので、通常の配当金と同じように源泉徴収をする必要がある、ということです。
非上場企業の場合は、20.42%の源泉徴収税額を差引いて、株主に払わなければなりません。
源泉徴収をしないで支払ってしまうと、後で税務署から源泉徴収税額を追徴されることになります。そのようなケースも結構多いですので、気をつけてください。
なお、このみなし配当は、総合課税の配当所得ですので、自己株式を売った株主の他の所得(給与や事業や不動産など)が多い場合には、合算することにより累進税率が跳ね上がってきます。
最高税率は所得税が45%、住民税が10%の55%ですので、売った株主には思わぬ高額な税金がかかってくることもありますので、十分ご注意ください。
もう1点、自己株式の買取りが配当金にならないケースもありますので、お伝えしておきます。
それは、株主に相続が発生して相続人が株式を相続した場合です。
その相続にかかる相続税の申告期限(10カ月)から3年以内に、自己株式として譲渡した場合は、みなし配当を認識せず、全額が譲渡所得とされます。
譲渡所得の場合は、譲渡益に対して20.315%の分離課税となりますので、みなし配当のような高い税率になることはありません。
これは、相続税の納税のために株式を譲渡することもあるため、税金面で優遇している、ということです。
その他にも支払った相続税を取得費に加算できる(譲渡益から控除できる)特例もあります。
自己株式に関しては、このようにいろいろ注意すべき点がありますので、是非、税理士に相談しながら進めるようにした方が良いと思います。
編集後記
何とか第2号を書くことができました。他のメルマガと違ってかなり時間がかかってしまいますね。なるべくわかりやすいように、と思って書いていますが、わかりにくければ、是非、上記私のアドレスにご質問ください。
第1号は日付も違っていたし、表現のおかしいところもありましたね(笑)。すみません。まだまだ、うまく、ペース良く書けていませんが、徐々にスタイルができてくるのでは、と思っています。
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