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配偶者居住権の放棄と税金【実践!相続税対策】第447号

配偶者居住権の放棄と税金【実践!相続税対策】第447号

2020.07.15

おはようございます。税理士の青木智美です。

民法の大改正から約1年、ついに配偶者居住権制度の施行が4月から開始されました。

今回は、配偶者居住権の放棄とそれに関する税金について確認していきたいと思います。

施行がされて間もない時に、放棄についてお話しするのも気が早い気もいたしますが、様々な状況をあらかじめ想定することにより、思わぬ課税がされないように、注意していただければと思います。

配偶者居住権は、遺産分割または、遺贈により取得することができます。

取得後、配偶者は、配偶者居住権を放棄することはできますが、譲渡することは禁止されています。

それでは、配偶者居住権を放棄した場合、たとえば老人ホームへの入居をする等のため放棄した場合、どのような税金がかかるのでしょうか?

これは、配偶者が放棄時に、対価を支払うかどうかで変わってきます。

ただ、ここで一点、疑問が生じます。
譲渡できないはずなのに、対価とはどういうことか、という点です。

これは、配偶者居住権の制度上、譲渡対価の収受は禁止されていますが、放棄の対価の収受まで禁止されるものではないためです。

少し不思議な話ですが、制度上はこのようになっています。

では、対価を支払の有無でどう変わるかです。

まず、配偶者居住権を放棄した際に、配偶者居住権を持つ者に、放棄の対価を支払わない場合、または著しく低い価額を支払った場合は、居住用不動産の所有者に、贈与税が課せられます。

消滅時の相続税評価額(対価を支払ったときは時価)から、残存価額を導き出し、贈与税の計算がなされます。

一方、配偶者居住権を持つ者が、放棄の対価の収受をした場合には、譲渡所得に該当し、所得税が課せられます。

当該対価の額から、減価を加味した配偶者居住権の取得費を控除し所得税率を乗じることになります。

このように、配偶者居住権は、不用意に放棄することにより思わぬ税金を払う可能性があるため、そもそもの取得の時点または、遺贈の時点から、様々な状況を考慮して設定する必要がありそうです。

編集後記

暑い日が続いています。マスクをして外に出ると本当に熱中症にならないか不安です。

コロナウイルスも怖いですが、熱中症で亡くなられる方も近年増加傾向にあるようです。

これからが、夏本番となります。
みなさまもどうぞお体にはご自愛くださいませ。

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