実践!相続税対策
贈与税の納税義務がある人とは?【実践!相続税対策】第452号
2020.08.19
おはようございます。
税理士の青木智美です。
今回は、贈与税の納税義務者について確認したいと思います。
生前贈与は、長期的に相続税の節税を考える上で、相続と切っても切れない関係にあります。
納税義務者の範囲については、相続税がない国への移住や、国外に住む親族への贈与などにより、相続税の負担軽減が行われるケースが増えたことから、厳格化傾向にあります。
贈与税の納税義務者に該当するか否かで、争われた有名な事件に、「武富士事件」があります。
武富士は、当時有名だった、消費者金融大手の会社です。
贈与されたのは武富士の株式で、日本在住の父から、香港に移住した息子へ贈与されました。
納税額でいうと、約1,330億円の課税不足が指摘されていました。
最終的には、息子の生活の拠点が香港であると認められ、日本の贈与税の納税義務者にはあたらず、国が敗訴しました。
当時の日本の法律では、息子は香港に3年間、さらにおおよそ
3分の2のみ在住していただけで、約1,330億円もの税金が回避できてしまうものでした。
日本で課税が認められるのは、必ず法律を根拠にする必要があり(租税法律主義と呼ばれています)、これに定められていないのであれば、何人も課税されません。
法律の抜け穴とでも言いましょうか、この裁判官も租税の平等が図れていないことは明らかだが、租税法律主義をとる以上、課税の取り消しはやむを得ない、としています。
このような事件もあり、贈与税の納税義務が厳格になってきました。
さて、現在の法律はどうなっているのでしょうか?
贈与者も受贈者も国内にいる場合は、当然、納税義務があります。
贈与者が国内に住所がある場合は、受贈者が国外にいても、日本国籍がなくても、課税されます。
さらに、贈与者が、贈与前10年以内に国内に住所があった場合も同様に、受贈者の状況にかかわらず課税されます。
また、受贈者が、贈与前10年以内に国内に住所があった場合も同様に、贈与者の状況にかかわらず課税されます。
以上のように、国内に住所がない場合でも、日本に住所があった時期が10年以内に延長されており、納税義務の範囲が拡大している
ことがわかります。
そういう意味では、実態に合った法律に変更されてきている、つまり、節税目的ではなく、本来の意味での移住以外においては、ほとんど課税を免れられなくなってきているようです。
編集後記
お盆、夏休みの時期が終わりました。
どこに行こう、何をしようと、楽しみに過ごせていた昨年がなつか
しいくらいです。
何をするにも、不謹慎かな?との疑問をいだきながらの生活。
本当に、何もない日常のすばらしさに気づかされます。
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