実践!相続税対策
相続財産ゼロでも相続税がかかる?【実践!相続税対策】第461号
2020.10.21
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
相続税対策のために、賃貸不動産をローンで購入することは、よくあります。
不動産の相続税評価は、時価よりも低くなりますので、その分、相続財産全体の評価額が下がることになり、相続税も下げることができます。
ただし、財産の分け方によっては、全体の相続税が下がらないことがあります。
たとえば、財産の状況が次のようであったとします。推定相続人は、兄弟2人です。
相続税評価額
・現預金 3,000万円
・有価証券 3,000万円
・自宅 2,000万円(時価 8,000万円)
・アパート 7,000万円(時価 2億円)
・借入金 ▲15,000万円
合計 0円
相続税対策のために、ローンで2億円のアパートを購入し、その結果、上記のとおり相続財産は、評価額ベースで0円となりました。
これで相続税はかからないと、ほっとひと安心です。
ただし、財産の分け方によっては、相続税がかかってくる可能性があります。
長男は、被相続人と同居しているため、自宅を相続し、また現金も相続したとします。
次男は、アパートおよびそのローン(借入金)、そして有価証券を相続したとします。
各人の財産額は、次のとおりです。
<長男>
・現預金 3,000万円
・自宅 2,000万円(時価 8,000万円)
計 5,000万円(時価11,000万円)
<次男>
・有価証券 3,000万円
・アパート 7,000万円(時価 2億円)
・借入金 ▲15,000万円
計 ▲5,000万円(時価8,000万円)
時価ベースでは、長男の方が額が多いですが、次男は家賃収入が入ってきますので、それで借入金を返済していくことができ、いずれは時価2億円の不動産が残るわけですから、これでよしと、します。
さて、全体では相続財産はゼロになるのですが、相続人各人ごとにみれば、長男はプラスで、次男はマイナスになっています。
相続税の計算では、相続税の対象となる課税価格は、各人ごとに計算します。
ここで次男の相続財産額がマイナスになったとしても、これは長男の方からは、差し引くことができません。
したがって、長男のプラス財産は、相続税の対象となってきます。
相続税対策をして、相続財産が減った、あるいはマイナスになったとしても、相続人ごとにみていかないと、思わぬ相続税がかかってしまうことがあります。
相続税の試算は、全体財産だけでなく、相続人にどのように分割するかも考慮して、計算していかないと正確なところは出てきません。
ご注意いただければと思います。
編集後記
今日は朝から顧問先の会社に訪問するのですが、水曜日は当社では全体会議をやっています。当然、出席できないのですが、昨今はZoomを活用してやっていますので、顧問先に少し早く行き、会議室をお借りして、Zoomで自社の会議に参加することができます。今までだったら考えられないのですが、これもコロナ禍でリモートが進んだおかげですかね...。
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