実践!相続税対策
未分割財産と相続税申告【実践!相続税対策】第459号
2020.10.07
皆様 おはようございます。
税理士の稲吉茂です。
今回のメルマガでは、亡くなった方の遺産が分割されない場合、相続税の申告はどうなるのかを、考えていきたいと思います。
相続人同士で話し合った結果、亡くなった方の遺産のうち、たとえば1つの遺産を相続人のAさんが、他の遺産を相続人のBさんが相続することに決めることを、遺産を分割する、といいます。
相続税の申告をしなければいけない場合、申告期限は、亡くなった方の相続が発生してから、10カ月以内に行わなければなりません。
申告期限内に遺産分割協議が終わらず、相続財産を誰がどう相続するか決まっていない状態を「未分割」といい、相続が決まっていない財産を「未分割財産」といいます。
相続税の申告にあたって、未分割ですと、次に掲げる特例を受けることができません。
・配偶者に対する税額軽減
・小規模宅地等の特例
これらの特例を受けることができないと、納めなくてもよい相続税を、仮とはいえ納税しなくてはいけません。
配偶者に対する税額軽減は、配偶者が法定相続分まで取得した場合の相続税額か、1億6,000万円のどちらか高い方の金額まで、相続税額が軽減されます。
また、小規模宅地等の特例は、宅地の相続税の評価額を、
・居住用であれば、330m2まで80%評価減
・事業用であれば、400m2まで80%評価減
・貸付事業用であれば、200m2まで50%評価減
するという特例です。
配偶者に対する税額軽減も、小規模宅地等の特例も、相続税額を引き下げる効果が非常に高くなります。
未分割の状態ですと、これらの特例措置が受けられないこととなり、納税者は多額の不利益をこうむります。
そこで、遺産の分割が決まるまでに、次の書面を出すことを条件とする救済措置が、定められています。
1つは、「申告期限後3年以内の分割見込書」といい、相続税の申告期限までに、申告書と同時に提出します。
これを提出しておかないと、分割が決まっても上記の特例を永久に受けられなくなります。
これは、本当に重大なことです。
3年以内に分割ができたら、分割が行われた日の翌日から4カ月以内に、更正の請求書を提出することにより、当初申告で納め過ぎている税額の還付を受けることができます。
他方、分割の結果、相続する遺産が増大しそれに伴って、税額が増える場合もあります。
この場合も、同じく4カ月以内に修正申告と追加納税が必要となります。
もう1つは、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」というものがあります。
これは、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したけれども、相続等に関する訴えが提起されているなどで、3年以内に分割ができない場合に、提出する書面です。
これは、申告期限後3年を経過する日の翌日から2カ月を経過する日までに提出します。
この申請書が受理され、税務署長の承認を受けている場合は、判決が確定した日など一定の日から4ヶ月以内に、更正の請求書等を提出します。
これにより、上記の軽減措置を受けることができます。
手続きは、申告期限後3年以内の分割見込書を提出した場合と一緒です。
未分割の場合、これらの救済措置がありますが、納め過ぎの税金を、一度は納めなくてはならないことに、変わりはありません。
できるだけ申告期限内に遺産分割協議をまとめ、税金を無駄に納め過ぎることがないようにしたいものです。
編集後記
お彼岸が過ぎて、急に涼しくなりました。
今年は幸い、現在のところ強い台風が関東地方に来襲していませんが、近年の台風は勢力が強いまま、本土に来襲することが多くなりました。
台風が来襲する予報が出たら、いざという時のために生活必需品のストックを確認しておくなど、備えが必要だと思います。
皆様は、どうなさっていますか?
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