不動産 税金相談室
自宅の売却中に相続が発生した場合の取扱い【不動産・税金相談室】
2021.05.14
Q 父は、自宅売却の売買契約を締結した数日後に亡くなりましたが、物件の引渡しも登記も完了していないため、相続税の申告において「小規模宅地の特例」を適用することは可能でしょうか。
また、自宅売却による譲渡所得は、どのように申告するのでしょうか。
A ご質問のケースでは、ご自宅の名義は未だお父様(被相続人)にあるものの既に売買契約が締結された後であるため、小規模宅地の特例を受けることはできません。
売買契約の締結により、相続財産となるのは不動産ではなく、売買代金の未収金(売買による残代金請求権)という「債権」となるためです。
小規模宅地の特例は、一定の要件を満たす居住用・事業用・貸付用の土地でなければなりませんから、売買によって債権となった場合には、特例の対象とはならないのです。
当然、相続税申告において、土地として評価することもありません。
この場合は、売買代金の未収金(売買価額から手付金等を控除した残金)の金額によって評価することとなりますので、ご注意ください。
ところで、売買による譲渡所得は、どのように計算すべきでしょうか。
譲渡があった日は「売買契約日」か「引渡日」かの、いずれかを選択することができます。
売買契約日を基準とすれば、被相続人であるお父様が、引渡日を基準とすれば、相続人の方が譲渡所得の申告をすることになります。
被相続人が申告する場合には、相続発生後4ヶ月以内に、準確定申告により申告することになり、居住用であれば 3,000万円特別控除などの特例を受けることができるほか、住民税の負担は生じません。
また、譲渡により発生する税金は、相続税の申告において、債務控除の対象となります。
一方、相続人が申告する場合であっても、要件を満たしていれば居住用の3,000万円控除を受けることは可能です。
ただし、譲渡により発生する税金は相続人の税金ですから、相続税申告における債務控除の対象とはなりません。
ただこの場合は、相続財産である未収金に対応する相続税額を、譲渡所得の計算上、取得費に加算することが認められます。
被相続人と相続人のいずれが譲渡所得の申告をするかにより、有利・不利が生じますので、十分にご検討ください。
《担当:青木》
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