実践!相続税対策
債務控除後がマイナスで、代償金がある場合【実践!相続税対策】第508号
2021.09.15
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
先々週9/1の第506号で、相続財産から債務を控除したらマイナスになった場合、そのマイナスは切り捨てられる。
他の相続人の相続財産がプラスであっても、そのプラスから控除することはできない、という話をしました。
この場合、代償金を払っているために、マイナスになっているのであれば、注意が必要です。
事例で考えてみます。
父の相続があり、相続人は兄弟2人です。
兄は次の財産を相続しました。
・自宅土地 評価額 8,000万円
小規模評価減 ▲6,400万円
・自宅建物 1,000万円
・弟へ代償金 ▲2,000万円
・債務葬式費用 ▲1,000万円
────────────────────
差引合計 ▲400万円
弟は次の財産を相続しました。
・預貯金等 2,000万円
・アパート土地 2,400万円
・アパート建物 700万円
・兄より代償金 2,000万円
────────────────────
差引合計 7,100万円
このような計算になると、兄のマイナス分は弟の相続財産から控除することができません。
弟の財産合計、7,100万円に相続税がかかってきます。
注意すべきは、ここでの代償金の計算です。
先月8/11の第503号で、代償金の計算をその対象となる財産の時価で計算している場合には、相続税の計算が違ってくることを書きました。
上記の事例で言うと、兄の相続した自宅土地の時価を1億円として、代償金の計算をしているとします。
この場合、相続税計算上の代償金の額は、次のように計算します。
代償金2,000万円× 相続税評価額8,000万円/時価1億円= 1,600万円
実際の代償金は2,000万円支払っていますが、相続税の計算上は、1,600万円で計算する、ということです。
そうなると、兄の相続財産から控除する代償金は1,600万円となり、相続財産の合計はちょうど0円となります。
弟の方は、相続財産に加算する代償金が1,600万円となり、相続財産の合計が6,700万円になり、400万円減ることになります。
兄弟2人の相続税の合計が、変わってくるのです。
通常は、上記の代償金の計算方法によったとしても、兄と弟の相続財産は変わりますが、合計は同じです。
相続税の合計も変わらない、ということになります。
ただし、今回の事例のように、片方が債務控除でマイナスになっている場合は、代償金の計算の仕方によって、相続税の合計が、変わってくることになります。
代償金がある場合には、注意したいところですね。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
自民党の総裁選が盛り上がっていますね。党内の様々な人間関係を見ていると面白いものです。ただ、これは日本の首相を決めることでもあるので、本来はこんな短期間でなく、じっくり自民党員だけでなく国民が参加して選んでいくべきでしょうね。大統領とは違うのでそういうわけには行かないのかも知れませんが。
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