実践!相続税対策
小規模宅地の家なき子特例について【実践!相続税対策】第545号
2022.06.08
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
相続税の計算において、居住用宅地(自宅)については、小規模宅地特例というものがあります。
330m2まで、80%評価減してくれる、というものですね。
この特例の趣旨は、同居親族の生活を守る、ということにあります。
自宅に多額の相続税がかけられてしまうと、残された親族は、家を売らざるを得なくなってしまう、こともあるからです。
ただ、同居できないケースもあります。
たとえば、親と同居していた子が、転勤で実家から通えない地域に赴任するため、借家住まいしている場合などです。
あるいは、親と同居していた子が、東京の大学に入り、下宿して大学に通っている、ような場合です。
このような場合に、親が亡くなってしまうと、本来、実家に戻るつもりだったのに、たまたま同居していなかったばかりに、高い相続税を払うことになってしまいます。
そこで、通称、家なき子特例と言われているものがあるわけです。
ただ、実家に戻る状況であることのために、自分または配偶者の家を持っていないこと、被相続人に配偶者や同居している相続人がいないこと、が条件になっていました。
すなわち、相続後は空き家になってしまい、自分の家もないので、いずれは戻るだろう、という状況です。
そのような趣旨で、家なき子特例があったわけですが、この特例が、節税に使われるケースが目立ってきたことにより、平成30年に改正が行われました。
すなわち、自分または配偶者が家を持っていなければよい、ということで、自宅を子に贈与したり、同族会社に譲渡したりして、家なき子になっておくという節税です。
どのように改正されたかというと、次のような者は、家なき子に該当しない、ということになりました。
・相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族や、同族会社などが所有する家屋に住んだことがある者
・相続開始時に住んでいた家屋を、過去に所有していたことがある者
この改正により、家なき子特例を節税に使うことは、ほとんどできなくなった、と言ってもいいですね。
本来の趣旨の家なき子のみが、この特例を使える、ということになりました。
ただし、上記の東京の大学に行った子が、親名義のマンションに住んでいたり、親戚の家から通っているような場合も、家なき子特例が使えなくなってしまうのは、ちょっと厳しいかも知れませんね。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
梅雨入りは先だと言っていたのに、いきなり梅雨になってしまいましたが、なかなか気象を予測するのは難しい環境になっているのかも知れませんね。
それにしても、今日の東京はちょっと寒い感じがします。
メルマガ【実践!相続税対策】登録はコチラ
⇒ https://www.mag2.com/m/0001306693.html