実践!相続税対策
同族会社への貸付金と相続税その1【実践!相続税対策】第556号
2022.08.24
おはようございます。
税理士の青木智美です。
新規の法人のお客様の決算書を拝見したときに、多額の役員借入金が計上されていることがあります。
多くは、中小企業の同族会社で社歴が長く、会長から会社を引き継いでまもなくという会社で、会長からの借入金が残っているという場合でしょうか。
貸付金は、当然相続財産になりますが、これが、自社に貸し付けているとなりますと、相続財産になることを失念されている場合がよくあります。
会社からもらえるかどうかもわからないのに、なぜ相続財産にしなければならないのか、という質問を受けることがあります。
さて、ここでの貸付金評価のポイントは、会社から「もらえない」というのが、どの程度「もらえない」のかです。
この点について、裁判で争われた事例があります。
こちらは後で簡単に紹介いたします。
まずは、相続財産の貸付金を評価しない場合の規定をみていきましょう。
これは、財産評価基本通達で定められています。
債権の全部または一部が、課税時期において、破産手続開始の決定等があった場合、その他回収が不可能、又は、著しく困難であると見込まれるときにおいては、その金額については、評価しない。
とあります。
破産手続の開始の決定については、白か黒かの話で、明確であり、判断に迷うことはないと思います。
しかし、その続きの「その他回収が不可能、又は、著しく困難であると見込まれるとき」とは、どの程度の状況を示すのかの判断が難しいように思います。
5年以上返済されていなければよいのか、10年であればよいのか、債務超過であればよいのか等、様々な疑問が湧いてきます。
この点、裁判では、会社が債務超過であるということだけでは、回収不能とは認められないとしています。
債務超過であるだけで、必ずしも将来においても回収可能性がない、とは言えないから、ということのようです。
となると実務上、回収可能性がないと証明するのは、かなり難しいように思いますので、基本的に残高があれば財産として把握する必要がありそうです。
とすると、自社への多額の貸付金をどうしたらよいのか、という疑問が出てきます。
こちらについては、次回解説していきたいと思います。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
最近は、大型連休をお盆の季節に取っている会社が増えているように思います。
お客様の中でも2週間お休みとなっている会社もあり、ご家族と楽しく過ごされていることでしょう。
弊社では自由に3日夏休みが取れるため、いつ取ろうか、迷うことも多いですが、取る際には何かテーマを決めて新しい知識の獲得をしたいと思います。
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