実践!相続税対策
同族会社への貸付金と相続税その2【実践!相続税対策】第558号
2022.09.07
おはようございます。
税理士の青木智美です。
前々週の私のメルマガの続編です。
同族会社に貸付金がある場合、そのまま貸し付けた者が亡くなってしまうと、これは相続財産になってしまいます。
今回は、この貸付金、会社から見れば役員借入金が多額になった場合の解消方法について、考えていきましょう。
<1.役員報酬の見直しと貸付金の回収>
下記のような会社が、実際にありました。
毎年赤字を出しながらも役員報酬を多額に計上し、資金繰りが困るときは、同役員が会社に貸付けを行っていました。
高額な役員報酬の設定のせいで、会社の決算書は当然悪く、しかも役員報酬は給与所得として、個人に税金がかかります。
さらにいえば、役員借入金の増加に結び付き、泣きっ面に蜂の状態です。
ご相談後、個人のローンの返済からある程度収入を確保したいという方以外については、役員報酬を減額し、その分、借入金の返済をはじめました。
これにより、借入金の減少のみならず、赤字改善、個人所得税・住民税の引き下げにもなります。
これは極端なケースですが、これ以上貸付金を増加させないよう、損益や法人税などの状況も見ながら、慎重に検討することが必要です。
状況が悪いのに、何もしない、何をしたらいいかわからない、というのは最悪です。
やはり毎年の少しずつの対策が、効果的といえます。
<2.債権放棄>
役員が債権を放棄した場合には、当然にその借入金は消滅することになります。
放棄手続きは簡単で、役員から法人に対して内容証明などにより、債権放棄通知書を送ることになります。
手続きとしては簡単ですが、大きな問題があります。
債権放棄を受けた会社は、受贈益として課税されます。
それだけではなく、債権放棄により会社の株価が上がるようなことがあれば、債権放棄者からその会社の株主に対して贈与がされたと、みなされる可能性があります。
このようなことからすると、債権放棄ができるのは、赤字ないし繰越欠損金が多額にあり、債務超過となっている会社に限られそうです。
ただ、借入金が多額にあるということは、債務超過などに陥っていることが想定されます。
そのような状況でも、その役員の相続人に相続税がかかる状況であれば、債権放棄は検討すべきでしょう。
今回は、2件の解消方法を記載しました。
多額の借入金があるときは、早目に検討を始めましょう。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
今回も、前回に引き続き債権放棄について記載しました。
税務は本当にややこしいと思います。
所得税・法人税・贈与税・相続税とあらゆる税金に配慮し、対策が必要なことが多いため注意が必要ですね。
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