実践!事業承継・自社株対策
事業承継税制を適用した場合の贈与税【実践!事業承継・自社株対策】第116号
2022.09.08
Q 事業承継税制を使って、株式を後継者である息子に贈与しようと考えています。
それとは別に、相続対策を考えて、毎年子どもや孫に何らかの贈与をしていますが、事業承継税制を使うと、他の財産の贈与税が高くなるとも聞いています。
これはどういうことでしょうか?
A 事業承継税制により、株式を贈与した場合の贈与税の計算、納税猶予額の計算は、次のように行います。
1.まずは、その年に贈与を受けた財産の合計額により、納税猶予を適用しない場合の贈与税額を計算します。
これには、事業承継税制の適用を受けようとする株式や、その他、毎年行っている贈与も含めて計算します。
2.次に、事業承継税制の適用を受けようとする株式だけの贈与を受けたものとして、贈与税額を計算します。
この贈与税額だけが、納税猶予をされることになります。
3.上記の1から2を差し引いた額が、その年に納付する贈与税額になります。
ご存知のとおり、贈与税は累進税率が適用されます。
すなわち、贈与財産が大きくなればなるほど、税率が高くなります。
上記の1では、事業承継税制の適用を受けようとする株式も入れて贈与税額を計算しますので、相当高い税率で計算されることになります。
したがって、毎年行っている贈与財産についても、合わせて計算しますので、高い税率が適用されることになります。
そのため、ご質問のように、他の財産の贈与税も高くなります。事業承継税制の適用を受けようとする年は、他の財産の贈与はしない方が良いかと思います。
ただし、事業承継税制を使って株式を贈与する場合は、相続時精算課税を併用することが一般的です。
相続時精算課税を使うことにより、贈与税率は一律20%となりますので、この場合には他の贈与財産にかかる税率も20%に抑えることができます。
なお、贈与税は、贈与を受けた人ごとに計算しますので、株式の贈与を受けない子や孫は、通常の贈与税の計算となります。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
コロナ禍も徐々に収まってきたこともあるのか、最近また税務調査が多くなってきました。
相続税の申告を行う場合は、当社では必ず書面添付をしていますので、税務調査を行う前には税理士に対する意見聴取があります。
最近あった意見聴取でも、相続税の場合には預金や有価証券、保険など金融資産に関することが多いですね。
特に税理士が行っている申告では、土地評価などはそれ程問題になることは少ないですね。
今週もまた1件税務署に行ってくることになります。
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