不動産 税金相談室
長期譲渡と短期譲渡が両方ある場合の 3,000万円控除【不動産・税金相談室】
2023.02.03
Q 私は、令和4年に自宅を 6,000万円で売却しました。
この自宅は、父親が昭和60年に 4,000万円で取得したもので、平成15年に私と弟が共有持分1/2ずつを相続しました。
その後、私は平成30年に弟の持分を1,500万円で購入し、売却直前まで居住していました。
父親からの相続分は長期譲渡となりますが、弟から購入した分は5年以内の短期譲渡かと思いますが、このような場合どのように譲渡所得の計算を行えばよいのでしょうか。
A 相続で取得した持分と、弟さんから取得した持分で、各々譲渡所得を計算します。
本件の場合、ご質問のとおり相続取得分は、父親の当初取得時期を引き継ぐため、長期譲渡所得に該当します。
一方、弟さんからの売買取得分は、令和4年1月1日時点で取得から5年以内のため、短期譲渡所得に該当します。
なお、売却時にご本人の居住用に供されていることから、3,000万円控除の特例を適用することが可能です。
本件のように、短期譲渡所得と長期譲渡所得が両方ある場合には、短期譲渡所得から 3,000万円控除を行い、控除枠を使いきれない場合、長期譲渡所得からも控除することが可能です。
短期譲渡所得の方が税率が高いため、納税者有利な取扱いとなっています。
本件の具体的な譲渡所得計算は以下のとおりです。
(簡便的に、仲介手数料や印紙等の譲渡費用は考慮外としています)
1.相続取得分
(1)譲渡収入・・・ 6,000万円÷2= 3,000万円
(2)取得費・・・・ 4,000万円÷2= 2,000万円
(3)譲渡所得・・・ (1)-(2) = 1,000万円
2.売買取得分
(4)譲渡収入・・・ 6,000万円÷2=3,000万円
(5)取得費・・・・ 1,500万円(弟から取得した価格)
(6)譲渡所得・・・ (4)-(5) = 1,500万円
この譲渡所得に対して、3,000万円控除を適用することになりますが、控除の順番は、売買取得分 1,500万円→相続取得分 1,000万円です。
本件では、譲渡所得の合計が3,000万円以下のため、結果として譲渡所得税は発生しませんでした。
なお、仮に父親が当初取得した価格が分からない場合は、原則として、相続取得分の取得費は、概算取得費(譲渡収入の5%)を用いることになります。
取得費は、3,000万円×5%=150万円ですので、譲渡所得は2,850万円となり、3,000万円控除の残枠を引いた後でも1,350万円の譲渡所得が残ります。
この部分は、令和4年1月1日時点で10年超の所有期間であるため、所得税・住民税を合わせて14.21%の税率で税額計算が行われることとなります
《担当:税理士 藤井 裕生》
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