実践!相続税対策
マンションの相続税評価の見直し3【実践!相続税対策】第602号
2023.07.12
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
マンション、特にタワーマンションの市場価格と相続税評価額の乖離が大きくなっているため、その見直しが行われていることは、このメルマガでも既に2回取り上げています。
(第584号、第598号)
そのための有識者会議の第3回目が6月22日に行われ、いよいよ具体的な評価方法が提示されました。
それによると、まず対象になるのは、区分所有のマンション一室の評価です。
ただし、総階数2階以下の物件、および、区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、そのすべてが親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等)は、除かれています。
対象となるマンション一室の評価は、まずは、現行の相続税評価を行います。
土地は路線価をベースに、敷地の持分を乗じたもの、建物は固定資産税評価額がベースとなります。
これらを合計したマンション一室の評価額を、補正していくことになります。
具体的な算式は、次のようになります。
現行の相続税評価額 × 当該マンション一室の評価乖離率 × 最低評価水準0.6(定数)
評価乖離率とは、時価が相続税評価額の何倍になっているかの数値です。
たとえば、時価が5,000万円で、相続税評価額が2,000万円の場合は、5,000÷2,000=2.5の評価乖離率ということになります。
この評価乖離率は、売買実例等に基づいて、統計的手法により、今回、計算されています。
時価と相続税評価額が乖離する要因として、
「築年数」、「総階数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」
の4つが取り上げられています。
前3つはわかるかと思いますが、「敷地持分狭小度」は、
その一室に係る敷地利用権の面積 ÷ その一室に係る専有面積
マンション一室の床面積に対する敷地持分面積の割合、ということです。
さて、評価乖離率を出す計算式は次のとおりとなりますが、各要素に乗じたりする数値は、統計的手法により出されたものなので、正直、よくわかりません(笑)。
国税庁HPなどで自動計算できるようにするようです。
<評価乖離率の計算方法>
次の(1)から(4)までを合計した値
(1)建物築年数×△0.033
(2)総階数÷33×0.239
(3)所在階×0.018
(4)敷地持分狭小度×△1.195+3.220
(2)で、総階数を33で割った数値が1.0を超える場合は、1.0とします。すなわち、33階以上は33階と同じということになります。
なお、評価乖離率が1.67以下の場合は、現行の相続税評価額のままとします。
すなわち、100÷1.67≒60で、時価の60%以上の評価になっているのであれば、そのままでOKということです。
さらに、評価乖離率が1.0未満となる場合(すなわち相続税評価額が時価より高い場合)は、相続税評価額に乖離率を掛けて、時価に補正することになります。
評価乖離率は上記のとおりに出すのですが、もう一度マンション一室の評価方法を、掲示します。
現行の相続税評価額 × 当該マンション一室の評価乖離率× 最低評価水準0.6(定数)
この算式によると、現行の相続税評価額に評価乖離率を乗じた上で、0.6を掛けています。
これは、評価乖離率を乗ずることによって、時価を算出し、その60%を相続税評価額にする、ということです。
この60%というのは、戸建ての時価に対する相続税評価額の平均です。
マンションの評価を見直すにしても、戸建ての評価額とバランスを取らないと、今度は戸建の方に節税志向が向いてしまいます。
マンションの市場価格にも影響してしまいます。
そこで60%を掛け、戸建てとのバランスを取っているわけです。
以上、少し難解なところもありますが、今後通達案が作られ、パブリックコメントを経て、来年令和6年1月以後の相続、贈与から改正されそうです。
ただ、まだ不明な点もたくさんあることから、今後も注視していきたいと思います。
《担当:北岡 修一》
編集後記
今日はなかなかわかりやすく書くのが難しかったですがおわかりになりましたでしょうか?
これはマンション一室の評価で、マンション一棟を購入した場合には影響してこないようです。
最高裁で路線価評価が否認されたのは、正にマンション一棟の評価なので、この改正ではそこは見直されないことになりますが、今後の通達案などで確認できればと思います。
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