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会社規模による株価評価の違い【実践!事業承継・自社株対策】第161号

会社規模による株価評価の違い【実践!事業承継・自社株対策】第161号

2023.08.10

Q:当社は、社員10人弱の不動産業(仲介および賃貸)ですが、事業承継や相続税対策を考え、自社株を親族に贈与していこうと考えています。
当社の株価を算定してもらったところ、純資産価額が類似業種比準価額の4倍程度と、かなり高くなっています。

できるだけ類似業種比準価額で評価できると良いのですが、どのようにしていったら良いのでしょうか?
なお、当社の売上は、近年は2億円前後を行ったり来たりしています。

A:親族に自社株を贈与する場合、その株価は、原則的評価方式によることとなっています。

原則的評価方式は、ご質問の純資産価額と類似業種比準価額を組み合わせて、計算することになっています。

会社規模が大きければ大きい程、類似業種比準価額を使える割合が多くなっていきます。

したがって、ご質問のお答えとしては、会社規模を大きくすればよい、ということになります。

会社規模は、総資産価額と従業員数および年間売上の3つで判定することになっています。

その判定の仕方は、まず総資産価額の基準と従業員数の基準を比べます。そのいずれか低い方の基準が選ばれます。

従業員数が10人前後ということは、5人超20人未満である「中会社の小」という規模になります。

会社の規模は、大会社、中会社(大、中、小)、小会社の5つの区分がありますので、下から2番目の規模になります。

賃貸業もされているということで、不動産を所有されていると思われるため、総資産の額が多かったとしても、従業員数基準が低ければ、こちらの規模が採用されます。

次に、この従業員数基準と、年間売上高基準が比較され、高い方の基準が選ばれ、これが最終決定となります。

不動産業の場合、売上が2億円以上だと「中会社の中」、2億円を下回ると「中会社の小」となります。

御社の場合、2億円前後ということで、微妙な線にあります。2億円以上であれば、従業員数基準よりも上の会社規模である「中会社の中」が選定されます。

ちなみに、「中会社の小」の場合は類似業種比準価額を60%取れますが(純資産価額を40%取る)、「中会社の中」になると、類似業種比準価額を75%取ることができます。

たとえば、類似業種比準価額が10,000円、純資産価額が40,000円だった場合、次のように評価されます。

「中会社の小」の場合
 10,000円×60%+40,000円×40%= 22,000円

「中会社の中」の場合
 10,000円×75%+40,000円×25%= 17,500円

さらに、上の規模に行く場合、従業員数基準であれば20人を超えると「中会社の中」、35人を超えると「中会社の大」、あるいは総資産の額によっては「大会社」になります。

売上基準の場合には、4億円以上になれば「中会社の大」、15億円以上になれば「大会社」になります。

どちらが達成しやすいのかは、会社の方針にもよるでしょうが、1つの目標として目指していただければと思います。

ちなみに、上の例で、「中会社の大」、「大会社」になった場合の評価額は、次のとおりとなります。

「中会社の大」の場合
 10,000円×90%+40,000円×10%= 13,000円

「大会社」の場合
 10,000円×100%+40,000円×0%= 10,000円

会社規模によって、評価額が大きく変わるのがわかるかと思います。

《担当:税理士 北岡 修一 》

編集後記

不動産業の場合、不動産の売買などがあると急に売上高が増えたりします。会社規模は直前期の売上などで判定しますので、そのような時に株式贈与などを検討するのも良いかと思いますね。
あるいはグループ内に何社かある場合は、合併することなどにより会社規模を大きくすることも考えられます。

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