実践!事業承継・自社株対策
非上場株式を、個人が個人に譲渡する場合と、個人が 法人に譲渡する場合の違い【実践!事業承継・自社株対策】第162号
2023.08.17
Q 以前、父から父が代表を務めるA社の株式を、1株2万円で購入しました。
この度、私はB社を設立したので、以前購入したA社株式を、B社に譲渡しようと考えております。
この時の価格は、以前の株価2万円を目安に考えておりましたが、父に、個人間と個人法人間では譲渡していい価格が異なるのでは?と言われました。
同じ譲渡なのに、譲渡先が個人か法人かで価格が違うということはあるのでしょうか。
A 株式の価格は、売主と買主の交渉により決まり、いくらならよくて、いくらなら悪いということは、本来はありません。
ただ、いくらでもよいとしてしまうと、特に親族間や関係会社間で、税金を安くするために、恣意的な取引が行われる可能性があります。
そこで、課税の公平の観点から、一定のルールを定め、それに則らない価格で譲渡等をした場合には、税金を課する、ということになっています。
この場合、個人であれば、贈与税・相続税・所得税において、法人であれば、法人税でルールを決めています。
法人は、利益を求めることを目的として設立されるため、個人よりも、その利益の追求と、その結果得られる利益の計上をきちんとする必要があります。
一方、個人の場合は、必ずしも合理的に利益を得る行動ばかりをするわけではない、と考えられております。
また、相続であれば、人が亡くなるという避けられない状況であることから、法人と個人とでは、株式の移転に関して、適正とされる譲渡価格が異なってきます。
このため、お父様がおっしゃる通り、個人から法人に譲渡する価格は、個人間で譲渡された価格2万円ではなく、それよりも高い価格での譲渡が必要になる可能性があります。
特に同族関係の会社であれば、より高い評価となります。
具体的には、会社規模にかかわらず、
(1)純資産価格と類似業種比準価格の双方の価格を株価に50%ずつ加味すること
(2)純資産評価にあたっては、土地、上場株式は時価評価すること
(3)相続税評価額と簿価の差額に対する法人税相当額を、純資産価額から控除できないこと
個人間であれば、相続税評価額で譲渡すれば問題ないのですが、個人から法人に譲渡する場合は、上記のようにそれを修正する必要が出てきます。
これが、個人間の移転とくらべて、個人から法人への譲渡価格が増加する要因となります。
株式を譲渡する場合の価格は、誰から誰へということや、譲渡する株主が、会社の主たる株主であるかどうかなどがポイントになりますので、慎重に検討するよう、ご注意ください。
《担当:税理士 青木 智美 》
編集後記
夏休み、皆様はどのように過ごされておりましたでしょうか。
どうしてもこの時期は台風が発生するため、夏休みの予定をたてても、気になってしまいますね。
自然は本当に偉大なので、警戒するに越したことはないですね。皆様も十分にご注意くださいませ。
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