実践!事業承継・自社株対策
自社株を贈与した場合の遺留分対策(除外合意・固定合意)【実践!事業承継・自社株対策】第173号
2023.11.02
Q 中小企業を経営している者ですが、事業承継税制により自社株を後継者である長男に贈与する予定です。
ただ、子どもは長男の他に次男、長女がおり、自社株の評価がかなり高いため、遺留分を侵害してしまうことが確実です。
株式を遺留分の計算からはずすことができる対策が、あるとのことですが、どのようなものでしょうか?
A ご質問のような遺留分の問題に対処するため、経営承継円滑化法では、民法特例を定めています。
この遺留分に対する民法特例には、除外合意と固定合意があります。
これらは、推定相続人全員の合意の上で、後継者に贈与された自社株について、次の合意をすることができます。
<除外合意>
その自社株を、遺留分算定基礎財産から除外する。
<固定合意>
その自社株の遺留分算定基礎財産に算入する価額を、合意時の時価に固定する。
すなわち、合意後に上昇した価額については、後継者の努力分として、遺留分の計算に含めないということです。
なお、固定合意の時価については、税理士、公認会計士または弁護士等による証明が必要となります。
この民法特例を適用するためには、次の要件を満たすことが必要です。
<会社>
・中小企業者であること。
・合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場企業であること。
<現経営者>
・過去または合意時点において会社の代表者であること。
<後継者>
・合意時点において会社の代表者であること。
・現経営者からの贈与等により株式を取得したことにより、会社の議決権の過半数を保有していること。
その上で、次のように手続きを進めていきます。
1.推定相続人全員および後継者の合意
所定の事項を記載した合意書を作成する必要があります。
2.経済産業大臣の確認
後継者は、合意をした日から1か月以内に確認申請書に必要書類を添付して経済産業大臣に申請をします。
3.家庭裁判所の許可
経済産業大臣の「確認書」の交付を受けた後継者は、確認を受けた日から1か月以内に、家庭裁判所に申立て、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
様々な手続きが必要になりますが、自社株評価が高く、遺留分侵害が起こりそうなときは、是非、専門家に相談の上、除外合意または固定合意の手続きを取ることを、お勧めします。
《担当:税理士 北岡 修一 》
編集後記
11月に入りました。今年もあっという間にあと2か月ということになりました。年末が迫ってくると今年中にやっておくことはないか、ということを考えてしまいますね。
事業承継や相続税対策では、今年中に贈与や譲渡をしておいた方が良いものはないか、などを考えてみると良いかと思います。特に来年からはマンション評価が上がるので、今年中に贈与を考える方もいるようです。気になる方は是非ご相談ください。
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