実践!事業承継・自社株対策
相続時精算課税による株式の贈与【実践!事業承継・自社株対策】第200号
2024.05.23
Q 近々、父親が代表取締役を退任し事業承継をする予定です。そこで株式も後継者である私の方に移したいと考えています。
株価が高いので、事業承継税制も考えられますが、その後の面倒な手続きを考えると、乗り気になりません。
相続時精算課税による贈与もあると聞きましたが、結局は相続時に課税されるとのことで、意味がないのでは、とも思うのですが、いかがでしょうか?
A 確かに事業承継税制を選択した場合は、様々な手続きが必要になってきます。
また、その後の定期的な届出や報告も必要になり、取消事由に該当してしまった場合には、猶予税額および利子税を一括して払わなければならないなど、リスクもあります。
もっとスッキリと、一度で株式の承継を終わらせたい、と思われる方も多いですね。
そこで、相続時精算課税による一括贈与も、1つの選択肢として有用かと思います。
お父様が代表取締役を退任されるとのことで、役員退職金の支給も行われるのではないでしょうか?
長年代表をされていたとすると、役員退職金も相当の額となり、その年度の最終損益は、赤字になることも多いものです。
そうなると、その期末における株価はグッと下がる可能性がありますので、株式の贈与を受けるチャンスとなります。
そこで、相続時精算課税制度を使って一気に株式を贈与してしまうという方法が、有効となってきます。
確かに、相続時精算課税は、贈与者の相続時に、贈与を受けた株式を相続財産に加算しなければなりません。
ただし、その加算額は贈与時の株価でいいのです。
役員退職金の支給によって下がった低い株価が相続財産になります。
ここに相続時精算課税による贈与の最も大きな利点があるものと考えられます。
その後の業績により株価が上がっても、その値上り益には、贈与税も相続税もかからないことになります。
相続時精算課税は、2,500万円までは贈与税はかからず、それを超えた金額の20%の贈与税を支払うことになります。
ただ、この支払った贈与税も相続時には相続税から控除することができます。
正に、生前に、株価の低いときに、相続ができる、といっても良いのではないかと思います。
以上のことから、相続時精算課税による贈与も、是非、検討されると良いのではないでしょうか。
なお、相続時精算課税は、お父様が贈与をする年の1月1日に60歳以上でないと適用することができませんので、ご注意ください。
《担当:税理士 北岡 修一 》
編集後記
本日でこのメルマガも200号となりました!毎回お読みいただいている皆様、ありがとうございます。
当初は続かずに、間が空いてしまったこともありましたが、Q&A形式にしてからは、何とか続けることができ、ようやくペースに乗ってきた感じですね。
このメルマガで一番勉強になっているのは、他ならぬ書いている私たちだなとつくづく思います。なかなか書けないときもありますが、続けていて良かったと感じます。
これからも是非お読みいただき、何かあればご質問、ご相談等もしていただければ幸いです。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
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