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株式評価における営業権の評価【実践!事業承継・自社株対策】第208号

株式評価における営業権の評価【実践!事業承継・自社株対策】第208号

2024.07.19

Q 当社では毎年、株式の譲渡や贈与のために、自社株の相続税評価を計算しています。

毎年それなりの利益を出していますが、営業権の評価もしなければならないことを聞きましたが、そのようなものも株式評価に含めなければならないのでしょうか?

A 株式の相続税評価において、純資産価額を計算する際には、確かに営業権を評価する必要があります。

ただし、評価の結果、営業権が出ない場合もありますので、まずは試算してみることをお勧めします。

営業権の評価は、次の算式で行います。

●営業権の評価額=超過利益金額×営業権の持続年数(10年)に応ずる基準年利率による複利年金現価率

●超過利益金額=平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額×0.05

算式を見ると、とても難しいように感じますが、実際に計算してみると、それ程難しいものではありません。

営業権を評価するためには、まずは、下の方の算式である「超過利益金額」計算します。

最初の平均利益金額は、過去3年間の申告所得をベースに、次の修正を行い、平均の年利益を計算します。

・繰越欠損金を控除しない
・非経常的な損益を除く
・支払利子等は控除しない
・役員報酬は控除しない

一番大きな修正は、役員報酬を控除しないところの利益である、ということです。

その平均利益金額に0.5を乗じた金額から、標準企業者報酬額を控除することになります。すなわち、決められた一律の役員報酬額を控除する、ということですね。

標準企業者報酬額は、次のように計算します。

・平均利益金額が1億円以下
 → 平均利益金額×0.3+1,000万円
・平均利益金額が1億円超3億円以下
 → 平均利益金額×0.2+2,000万円
・平均利益金額が3億円超5億円以下
 → 平均利益金額×0.1+5,000万円
・平均利益金額が5億円超
 → 平均利益金額×0.05+7,500万円

標準企業者報酬額を控除してゼロになる場合は、超過利益金額はないことになりますので、営業権の評価は発生しないことになります。

その境目となる平均利益金額は、5,000万円となります。
平均利益金額が5,000万円の場合の標準企業者報酬額を計算すると、次のようになります。

5,000万円×0.3+1,000万円 = 2,500万円

この金額を、平均利益金額×0.5から控除すると、5,000万円×0.5-2,500万円 = 0

となり、超過利益金額は、0円となるからです。

役員報酬控除前の利益が、5,000万円以下であれば、営業権は出ない、ということですね。

超過利益金額の計算は、さらに総資産価額×0.05 の金額を控除することになります。

総資産価額が2億円であれば、1,000万円を控除します。

この場合は、役員報酬控除前の利益が1億円以下であれば、営業権は出ない、ということになります。試算してみます。

標準企業者報酬額 1億円×0.3+1,000万円=4,000万円
超過利益金額 1億円×0.5-4,000万円-1,000万円= 0

総資産価額がゼロということはないでしょうから、総資産価額が2億円程度あれば、役員報酬控除前の利益が、1億円以下であれば、営業権は出ない、ということです。

なお、この場合の総資産価額は、資産負債を相続税評価した場合の総資産価額となります。

このように超過利益金額を計算した上で、上記の最初の式で営業権の評価額を計算します。

なお、その式の中の基準年利率と複利年金現価率は、国税庁のホームページで随時公表されています。

以上のように、営業権は評価することになりますが、あくまでこれは、純資産価額を計算する際に使う、ということです。

多額の利益が計上されている場合は、会社の規模も大きい場合が多く、その場合は、純資産価額を使わず、類似業種比準価額だけで評価していることもあります。(従業員数70人以上の場合など)

その場合には、営業権の評価は株式評価においては関係ないとも言えます。

ただし、株式の売買の場合は、法人税法上の株式評価額を使うこともあり、その場合には純資産価額も参照することになります。

そうなると会社規模が大きくても、営業権を評価する必要が出てきますので、いずれにしても忘れないよう注意しておく必要がありますね。

《担当:税理士 北岡 修一》

編集後記

東京は昨日梅雨明けしたのですね。今日知りました。
昨日は豊洲市場の近くに行き、結構歩きました。建物が大きく1区画が大きいので、ちょっと迷うとものすごく歩くことになりますね...。

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