実践!事業承継・自社株対策
従業員持株会と役員持株会【実践!事業承継・自社株対策】第212号
2024.08.23
Q 当社には、従業員持株会があるのですが、役員が個別に持っている株式も持株会に入れたい、と考えています。
この場合、一般的には役員持株会を作るとのことですが、従業員と役員の持株会を分ける理由は何なのでしょうか?
A 基本的には、設立する目的が違うからです。
従業員持株会は、従業員の福利厚生(配当や奨励金などによる財産形成)の一環として、さらに経営への参加意識を高めていく、ということが目的となっています。
役員持株会の場合は、福利厚生という概念はなく、役員として一定の自社株を持つことによって、経営者意識を高めていくことを目的としています。
従業員持株会の場合は、上記のとおり福利厚生のために株式を購入する際に、会社から一定の奨励金を出すことができます。
なお奨励金は、給与所得として課税されることにはなります。
役員持株会の場合は、自社株を購入する際の奨励金を出すことはできません。会社法の忠実義務に違反する可能性があるからです。
また、役員にはオーナーの親族がいることが多いですが、親族と親族外では、株式の評価方法が違ってきます。
親族である役員は、原則的評価で高い評価となります。
親族でない方は、特例的評価の配当還元方式で低い評価となります。
このように評価方法が違うと、持株会で取引価格を一律に定めることができなくなりますので、持株会を分けることになります。
さらに、上場企業などでは特に役員は、インサイダー取引対策として、個人では株式を所有せず、持株会を通じて株式を所有するために役員持株会を作る、という目的もあります。
非上場企業の場合には、親族外に事業承継をするようなケースで、万が一途中で辞任して自社株で厄介な問題が起こらないよう、役員持株会を通じて株式を所有してもらう、というような場合もあります。
なお、上記いずれの問題もないような場合、すなわち、非上場企業で、親族外の役員や従業員のみで、奨励金の支給もない持株会であれば、役員と従業員を同一の持株会にするケースもあります。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
非上場企業の場合、役員と従業員の持株会を分ける理由は何だろうと疑問に思うことは結構あるのではないでしょうか?
親族の場合は、役員でも従業員でもやはり評価が違ってくるので、一緒にすることはできない、個別に持ってもらうしかない、などと考えると、親族外の役員・従業員は非上場企業の場合は、一緒でもいいのかな、とも思いますね。
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