不動産 税金相談室
生前贈与か遺言書か【不動産・税金相談室】
2024.12.17
Q 私は自宅兼店舗で個人事業を営んでいます。
この建物と土地については、将来、事業を受け継ぐ長男に渡したいと考えていますが、生前贈与をするか遺言書を作成するか、それぞれのメリットとデメリットを教えてください。
A 特定の相続人(後継者など)に財産を遺したい意向がある場合、生前贈与を行うか、遺言書を作成しておくか、どちらにすべきか迷われるケースは少なくありません。
将来、揉め事が生じないかなど、ご家族の状況や年齢によっても対応は異なりますが、財産の種類によっても対応は分かれるでしょう。
特に不動産のように、1つの財産が高額であり、かつ、分けにくい財産である場合には、その判断も非常に悩ましいです。
高額な財産であれば、生前贈与をした場合の贈与税負担が大きいことがその要因です。
生前贈与の方法には暦年課税方式や、相続時精算課税方式などありますが、基本的な考えとしては、1年間あたりの贈与額が小さくなれば、贈与方法の選択肢は広がりやすいです。
高額であっても、現金のように少しずつ贈与できる財産であれば、1年あたりの贈与額はそれほど大きくならずに済みますが、不動産の場合には登記も必要ですから、少しずつというのは難しく分けにくいのです。
また、贈与の場合には不動産取得税が発生するほか、登録免許税も相続に比べて割高ですから、これらの負担にも考慮しなければなりません。
さらには、相続税で適用される小規模宅地の特例など、相続税の制度ならではの特例もありますので、税金の計算上、生前贈与がデメリットに感じることも比較的多いようです。
ただし、税負担を考えなければメリットもあります。
それは、事業の後継者に早めに事業用資産を渡すことで、後継者が安定した経営ができること、また先代事業者(ご質問者)がご存命の間に手続きすることで、あなたの意向をしっかりと他の相続人に伝えることができ、争いを回避できる可能性があることです。
遺言書でも、あなたの意向を明確にすることはできますが、遺言書を確認する時には、あなたは既にいないわけですから、気持ちの面や人間関係の面では生前に贈与するメリットは大きいでしょう。
今年の贈与からは、相続時精算課税制度が改正されて今までよりも使いやすくなった一方、相続税の計算における3年内贈与なども改正され、生前贈与のメリットやデメリットは若干複雑になりました。
ご家族の状況に応じて、税負担面からのメリットを検討することも大切ですが、お気持ちの面などもしっかり考慮して、将来の「争族」対策もしておきたいですね。
《担当:税理士 樋口 智勇》
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