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相続税評価額と鑑定評価に差がある場合の株式評価【実践!事業承継・自社株対策】第230号

相続税評価額と鑑定評価に差がある場合の株式評価【実践!事業承継・自社株対策】第230号

2024.12.26

Q:父が先日亡くなり、私は現在、相続税の申告のため、父が経営していた会社の株式を評価しています。

類似業種比準価額(相続税評価額)は、1株約6,000円でした。

ただ、父の書類を整理していたところ、銀行からM&Aの提案書を見つけました。そこには、1株約80,000円と記載がされていました。
この場合、株式評価額をいくらで申告することが正しいでしょうか。

提案書の日付か、父が亡くなった日の1ヵ月前とかなり最近のことでしたので、類似業種比準価額6,000円で申告してよいか不安です。

また、私は事業に一切関与していなかったので、株式を80,000円で売却できるのであれば、すぐに売却をしたいと考えています。

すぐに売却した場合、相続税評価額を80,000円で申告する必要がありますか。

A:今の状況でしたら、基本的には、当該株式の評価は類似業種比準価額の1株6,000円で評価して問題ないと考えます。

最近、相続税評価額と鑑定評価に大きな差がある場合の裁判が増加しています。

ただ、あくまでも、相続税評価額と鑑定評価に大きな乖離がある場合でも、鑑定評価による必要がある『合理的な理由』が必要と考えられています。

『合理的な理由とは、他の納税者と比較し、租税の公平性を保てないような事実があるかどうか』が焦点となります。

このため、単純に乖離があるだけでは、鑑定評価とされる理由が不足しております。

すなわち、乖離が生じた合理的な理由、つまり納税者の何かしらの行為があったのち、評価に乖離が生まれ租税の公平性を害した状況が必要と考えます。

注意点としては、納税者の何かしらの行為とは、必ずしも納税者の租税回避の意図が必要ではない点です。

租税回避の意図があれば、税務署は当然、鑑定評価を主張するでしょう。

ただ、租税回避の意図がなくても、たとえば相続直前に組織再編を行った会社と、行っていない会社で株価に大きな開き生じる場合は注意が必要でしょう。

ご相談者様の場合は、銀行がM&Aを提案した時の価格が、類似業種比準価額と大きく離れているだけであり、相続があった時点では、売買ができるかどうかもわからない状況です。

このため裁判になっても、この乖離だけでは他の納税者と比較して、租税の公平性が保てないとの結論にはなりがたいと考えられます。

ただし、お父様が株式評価を下げるために、何らかの行動をされている場合は、鑑定評価で行う合理的な理由があるとされる可能性があります。

また、相続があった後に〇〇円で売却するという合意書や、意図的に株式の譲渡が相続後に延ばされているような場合も、鑑定評価で行う合理的な理由があるとされると考えられますので、ご注意ください。

お手持ちの資料に、このようなものがないかは十分にご確認ください。

なお、相続後すぐに売却されても特に問題にはならないと思われます。

最近、本件に似たような裁判事例がありましたので、検索してご参照いただければ思います。

《担当:税理士 青木 智美》

編集後記

あっという間に今年最後のメルマガとなりました。
年末というと、税制改正がとりまとめられる時期となります。我々の暮らしが少しでも良くなるような改正であるとよいのですが。

本年もご拝読いただきありがとうございました。来年も引続きどうぞよろしくお願いいたします。

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