不動産 税金相談室
アパートの取壊し費用や資産損失の損益通算【不動産・税金相談室】
2025.04.22
Q アパート1棟(8室)を所有して賃貸経営をしておりますが、この度、それを取壊して息子夫婦が自宅を建てることになりました。
立退料や取壊し費用などがかなりかかるため、今年の不動産所得は赤字になりそうです。
この赤字は私の給与所得から差し引いて、給与の税金を還付してもらうことはできますか?
また、アパート建物の未償却残高もまだかなりあり、これも損失として控除することはできますか?
A アパート取壊しのための立退料や取壊し費用などは、業務の清算の一環として行われるものと考えられ、不動産所得の必要経費とすることができます。
ただし、賃貸をやめてから家事用に転用していたり、取壊しがすぐに行われず放置されていた場合などは、取壊し費用は必要経費にならないことがありますので、ご注意ください。
また、未償却残高の取り扱いは、賃貸経営が事業的規模であるか、それ以外の業務的規模であるかによって、違ってきます。
事業的規模の場合には、未償却残高全額を資産損失として必要経費に計上した上で、赤字の金額全額を他の所得と損益通算をすることができます。
業務的規模である場合は、不動産所得の範囲内で資産損失を必要経費とすることができます。
ご質問者の場合は、アパート1棟(8室)のみで、事業的規模の形式基準を満たしておらず、業務的規模であるかと思われます。
ちなみに形式基準は5棟10室基準と言われており、戸建て賃貸の場合は5棟以上、アパートやマンションなどの場合は10室以上賃貸していると、事業的規模に該当するとされています。
両方がある場合は、戸建て1棟でアパート2室のように換算して計算します。
ただし、これはあくまで形式基準であり、賃貸収入の規模や賃貸経営の実態などが社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
ご質問者の場合、毎年の不動産所得の申告を、事業的規模ではなく業務的規模で行っているようであれば、立退料や取壊し費用等で不動産所得が赤字になっているとのことであり、建物の未償却残高を資産損失として必要経費に算入する余地はないものと思われます。
なお、業務的規模であっても、立退料や取壊し費用で赤字になった部分は、他の所得と損益通算することができます。
《担当:税理士 北岡 修一》
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