不動産 税金相談室
代償金を支払って相続した不動産の取得費【不動産・税金相談室】
2023.05.26
Q 父の相続にあたり、他の相続人(兄弟)に代償金を支払って不動産を相続しましたが、このたび、その不動産を売却することとなりました。
譲渡所得の計算上、兄弟に支払った代償金を取得費に含めることはできるのでしょうか。
A 他の相続人に代償金を支払って相続した不動産を売却した場合、その代償金は、譲渡所得の計算において取得費に含めることはできません。
あらかじめ売却が予定されているのであれば、代償金の計算において譲渡所得にかかる税金を考慮したり、他の遺産分割方法を検討するなど、注意する必要があるでしょう。
そもそも、相続時の遺産分割の方法には、一般的な現物分割のほか、代償金を伴う代償分割や、換価分割などがあります。
代償分割は、一部の相続人が財産を相続し、他の相続人には財産の代わりに代償金を支払うことで分割する方法であり、分割しにくい相続財産がある場合に用いられることが多いです。
代償金を支払うことによって相続財産を取得しているわけですから「その代償金は取得費に含まれるのでは」と考えがちですが、あくまで代償金の支払いは相続財産の調整であるため、購入代金や取得に要した費用とは認められません。
一方、相続税の計算上では、支払った代償金は相続財産から控除することができます。
つまり、代償金は相続税の計算上は考慮されるものの、譲渡所得の計算上では取得費や経費に含めることはできないのです。
もしも、相続する不動産の売却を想定した上で代償分割を行うのであれば、あらかじめ売却にかかる所得税・住民税といった税負担を計算しておきましょう。
売却した後で取得費に含めることができないと知ることとなれば、代償金を支払った上に、想定外の税金が発生することになりかねないためです。
また、売却を予定しているのであれば、代償分割ではなく換価分割(売却した代金で相続財産を分割する方法)による方法も一つの手ですね。
あとから相続人間の不公平が生じることがないよう、くれぐれもご留意いただきたいと思います。
《担当:税理士 樋口 智勇》
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