実践!相続税対策
国外財産調書だけではない書類の提示提出も必要に!?【実践!相続税対策】第418号
2019.12.25
おはようございます。税理士の青木智美です。
以前のメルマガで、財産債務調書についてご紹介いたしましたが、今回はその国外版である【国外財産調書】制度について紹介いたします。
財産調書とは、一定以上の資産を持つ方に、税務当局がその財産の明細を提出させるものです。
さて今年も、税制改正大綱が発表されました。
今回の税制改正に、国外財産調書に関する記述があります。
この改正は、国外財産に関する書類の提示・提出を求められ、応じない場合には、ペナルティが課されるというものです。
このまま国会を通過すれば、令和2年4月以後に開始される相続から適用され、その後の相続税、特に税務調査後の納税に影響が出てきそうです。
そもそも国外財産調書とは、どのようなものでしょうか?
これは、居住者の所有する国外財産の価額が、12月31日時点で5,000万円を超える場合に提出する書類です。
記載内容は、国外財産の種類、数量およびその価額、所在等になります。
提出期限は、その年の翌年3月15日までで、所轄税務署長に提出する必要があります。
確定申告書と一緒に提出することが多いかと思います。
●期限内提出のメリット
期限内に提出していた場合には、相続税または所得税に申告漏れが生じた場合でも、その国外財産対応部分の過少申告加算税等が5%軽減されます。
●期限後・未提出の場合のペナルティ
一方、期限後提出や未提出、重要な事項の記載が不十分な場合は、所得税に申告漏れが生じた場合に、その国外財産対応部分の過少申告加算税等が5%追加課税となります。
今回の税制改正大綱には、相続税についても追加課税するとの記述があります。
さらに、税務署職員から、国外財産調書に記載すべき国外財産の書類の提示提出が求められた場合に、応じないときは、下記のように取り扱われることになります。
1.先ほどメリットでご紹介した5%軽減措置は適用しない。
2.ペナルティでご紹介した追加課税を5%から10%とする。
国外財産の取得や、運用あるいは処分に関する資料の提出をしないだけで、加算税の負担が増すことになります。
また、もう一つ気を付けなければいけない点が、国外財産調書に虚偽の記載や、未提出等があった場合に、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があることです。
これは、財産債務調書にはない厳しい罰則です。
制度が導入されてから初めて、かなり悪質な状況で、国外財産調書を提出しなかったとして、今年、京都地検に告発されたケースがあります。
今後、国外財産については、特に注意が必要ですね。
編集後記
税制改正も気になるところではありますが、だんだん制度が厳しくなっていく傾向にあるのは言うまでもないようです。
安易な節税と思ってやったことが、ほとんどどんな資料でも手に入れられる税務署の調査で、かえって多額の税金を払うことになるかも知れません。
しっかりとした節税と、適正な申告を心掛ける必要がありそうです。
それでは、良いお年をお迎えくださいませ。
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