実践!相続税対策
相続前3年内に賃貸経営を始めた場合【実践!相続税対策】第432号
2020.04.01
皆様、おはようございます。税理士の北岡修一です。
平成30年、31年と、小規模宅地等の特例が改正されて、思わぬところで、特例の適用が受けられなくなてしまうことがあります。
特に平成30年の改正は、貸付事業用宅地に関する改正です。
アパートやマンション、貸家などの不動産賃貸業に供されている宅地については、貸家建付地として評価した後に、さらに評価減を受けることができます。
小規模宅地等の特例というものですが、200m2まで50%の評価減となります。
改正前は、相続開始の時点で貸付事業用宅地であれば、この評価減の特例を受けることができました。
ところが、平成30年の税制改正で、相続開始前3年以内に、新たに貸付事業の用に供された宅地については、この特例の適用を、受けることができなくなくなりました。
これは、相続直前に、購入価格と相続税評価額が乖離する収益物件を購入することによって、相続税を過度に減らそうとする行為を封じ込めるための改正です。
そのような動きが過熱していましたから、税制改正が行われたわけです。
ただ、そのような意図がほとんどないにも拘わらず、この税制改正で、相続税が上ってしまう方もいます。
たとえば、かねてから空き家で問題のあった建物を取り壊して、アパートを建てたような場合、メインは空き家対策であったのに、小規模の特例が使えなくなってしまいます。
あるいは、賃貸併用住宅に建て替えたばかりに、賃貸部分の土地の評価減ができなくなってしまいます。
もちろん、相続開始前3年以内に行った場合です。
理由の如何を問わず、相続前3年間に、賃貸事業を始めると、その土地の評価減はできない、ということになります。
ただし、例外もあります。
それは、相続開始(通常は亡くなった日)まで3年を超えて引き続き、事業的規模で賃貸事業をしている場合です。
事業として行っている方が、3年内に貸付け事業の用に供した宅地は、評価減の対象になるということです。
この場合の事業的規模とは、形式的には5棟10室基準です。
戸建てであれば5棟以上、マンションやアパートであれば、10室以上賃貸している場合には、事業的規模となります。
所得税で、青色申告特別控除を、65万円している場合ですね。
いつ亡くなるか、などというのは当然わかりませんが、新たに賃貸物件を建てたり、購入する場合には、このようなことがある、ということを、頭の片隅に入れておいていただければと思います。
編集後記
新型コロナウイルスの猛威は一向に収まりませんね。いつまで続くのか、本当に困ったものです。
税金の方も申告期限や納期限の延長などが、行われていますが、相続税の申告期限については、延長されてはいません。
ただし、個別の事情により申告期限の延長を申請することはできます。新型コロナウイルスの影響などで申告作業が進められない場合などは、早目に税務署に相談した方がよいと思います。
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