実践!相続税対策
相続不動産を売却して分割する場合【実践!相続税対策】第481号
2021.03.10
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
相続財産がほぼ不動産しかないような場合、かつ、その不動産を誰も欲しくない、というようなケースがあります。
このような場合には、不動産を売却して、その売却代金を相続人で分ける、という分割をすることがあります。
このような分割方法を、換価分割といいます。
財産を換金した上で分割する、ということですね。
換価分割を行うには、遺産分割協議書にその内容を明確に記載する必要があります。
記載する事項は、換価分割の対象となる財産、換価分割をする旨、売却代金から諸費用を引いた金額を、どのような割合で分けるか、などを記載します。
また、対象財産を誰が取得するのかも記載します。
換価後の分割割合で、各相続人が共有で取得してもよいのですが、多くは相続人のひとりが代表して取得します。
取得後に売却しますので、その手続きを考えると複数人で共有するよりも、1人の名義にした方が、手続きが簡単になるからです。
相続後に、代表して取得した人が売却して、他の相続人に売却代金から諸費用を引いた金額に、各人の取得割合を乗じた金額を、振り込むことになります。
この振り込む金額が、贈与にならないのかと、心配する方もいらっしゃいます。
これに関しては、国税の方でも明確にされています。
すなわち、共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、
その代金が、遺産分割協議書の内容に従って、実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはない、ということです。
相続税の申告においては、遺産分割協議書で各人が取得する割合が明確にされていますので、換価する財産の相続税評価額にその割合を乗じた金額を、各人が取得したものとして、相続税を計算します。
ただ、相続人によっては居住用の小規模宅地特例が受けられる、受けられない、などの違いが出てきます。
相続後に換価する=売却した場合には、譲渡所得税がかかってきます。
これも相続人によって、居住していた方は、居住用財産の3,000万円特別控除が受けられたりしますので、税額は変わってくることになります。
なお、換価分割に似た方法として、代償分割という方法があります。
これは、上記の例でいえば、相続人の1人が不動産を取得して、他の相続人には代償金(現金など)を支払う、という方法です。
相続人の1人がお金を払ってでも、その不動産を欲しい、という場合は、代償分割の方が良いですね。
相続後に売却する場合でも、その不動産に住んでいた相続人がいるのであれば、代償分割の方が良いかも知れません。
前述したように、居住していた人が不動産を取得すれば、居住用の小規模宅地特例を受けられる可能性があったり、
売却時には、居住用財産の3,000万円控除を受けることも可能だからです。
ただし、代償分割の場合には、代償金の額を決めなければいけませんので、そこでもめると分割ができなくなる可能性があります。
また、代償金を決めても支払いができるかどうか、というリスクもあります。
換価分割や代償分割は、相続財産や相続人の状況、意向によって、最適な方法を選ぶことが大事です。
その際には、税金も大きく関わってきますので、是非、私ども税理士にご相談いただければと思います。
編集後記
あっという間に3月も中旬に入ってきましたが、例年なら今の時期はほぼ、確定申告が終わって、ホッとしているところなのですが。
ただ、今年は1か月延長されているため、まだまだ終わりが見えていません...。期限が延びると、どうしても仕事も延びてしまうものですね。
メルマガ【実践!相続税対策】登録はコチラ
⇒ https://www.mag2.com/m/0001306693.html