実践!相続税対策
配偶者の税額軽減と二次相続【実践!相続税対策】第497号
2021.06.30
おはようございます。
税理士の青木智美です。
今回は、配偶者の税額軽減と二次相続の関係について考えてみたいと思います。
さて、おさらいですが、配偶者の税額軽減とは、
配偶者が相続により取得した財産が1億6,000万円または、配偶者の法定相続分相当額のいずれか大きい金額まで、
相続税がかからない制度です。
二次相続とは、たとえば父が先に亡くなり、母が父の財産を承継した場合、これを一次相続といいます。
次に、父の財産を承継した母が亡くなった場合に、子が承継する場合等の相続を、二次相続といいます。
配偶者の税額軽減は上記のように、配偶者の相続する財産に、ほぼ相続税がかからないことが多いため、かなり優秀な節税手段のように思います。
ただ、一次相続の税金のみに集中してしまうと、一次相続の際の税金は、ある程度抑えられても、
二次相続の際、つまり親から子へ相続が発生した際に、多額の納税が発生する可能性があります。
仕組みとしては、相続税の計算は、まず財産を評価した上で、基礎控除額を控除し、それを法定相続割合に基づき按分した後、各人の財産額に相続税率を乗じて、相続税の総額を求めます。
二次相続では、配偶者が亡くなられているため、法定相続人の数が減り、基礎控除が少なくなること、人数が少なくなるため一人当たり財産額が多くなり、累進税率が上がること、配偶者の税額軽減が使えないこと、
により、相続税が高くなります。
具体例を見てみましょう。
家族は、父・母・子、父の財産が1億6千万円、父が死亡し、すべての財産を、母が相続した場合です。
(基礎控除等は、考慮していません。)
【一次相続】
1億6千万円÷法定相続人2名=8千万円
母:8千万円×相続税率30%-700万円=1,700万円
子:8千万円×相続税率30%-700万円=1,700万円
相続税総額 3,400万円
配偶者の税額軽減後 0円
※母がすべてを相続し、1億6千万円以下のため、相続税はゼロとなります。
母が、父の相続の際に相続した財産1億6千万円を保有したまま死亡し、子が承継した場合
【二次相続】
1億6千万円÷法定相続人1名=1億6千万円
子:1億6千万円×相続税率40%-1,700万円=4,700万円
このように、一次相続では税金はかからなかったものの、二次相続では一次相続以上の税金がかかることがあります。
このため、配偶者が快適な老後を過ごすための資金は必要としても、配偶者の税額軽減の魅力と、二次相続の相続税の負担を、バランスよく考えて、一次相続の遺産分割の仕方を考えることが大事です。
編集後記
緊急事態宣言がやっとあけました。
コロナのワクチン接種も広まっているようです。
ただ、何か新しい動きがあるたびに、別の問題がまた浮上してきてしまいますね。
今年こそ本当に最後の年になることを祈るばかりです。
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