実践!相続税対策
相続時精算課税と節税【実践!相続税対策】第512号
2021.10.13
おはようございます。
税理士の青木智美です。
今回は、相続時精算課税適用と節税について考えてみたいと思います。
まず、相続時精算課税についてご説明します。
贈与を受けた場合には、その贈与税の計算方法として、「暦年課税」と「相続時精算課税」を選択することができます。
「暦年課税」は、暦年で基礎控除額110万円超の贈与を受けた場合に、贈与税を累進税率(10%~55%)で計算する方法です。
「相続時精算課税」は、贈与者ごとに累計で2,500万円まで贈与税がかからず、2,500万円超の部分は贈与税を20%の税率で計算する方法です。
なお、相続時精算課税については、一度選択するとその贈与者との間では、生涯、取り消すことができません。
相続時精算課税を利用できるのは、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫が贈与を受ける場合になります。
一見、相続時精算課税の方が有利なようにも感じます。ただ、本当にそうでしょうか?
たとえば、父から子が社会人になると同時に、相続時精算課税を選択して、毎年300万円ずつ贈与を受けるとしましょう。
確かに、2,500万円まで税金が課されることはありませんが、それ以上続けた場合、暦年課税の方が有利になるのではないでしょうか?
なぜならば、暦年課税は毎年110万円の基礎控除が利用でき、それは上限がなく続くからです。
長期にわたり、計画的に贈与を考えるのであれば、暦年課税の方が有利になる場合があります。
さらに相続時精算課税は、名前のとおり、相続時に精算されることになります。
つまり、贈与者が亡くなった時は、贈与者の財産の価格に、相続時精算課税の適用を受けた財産の価格を足して相続税を計算し、支払った贈与税を差引きます。
結果として、相続財産が増え相続税率が上がります。
一番怖い問題としては、相続税申告書にこれらの財産が記載されることにより、
長きに渡り、多くの財産を受けていたことが明らかになり、それが不平等となれば、相続人同士の争いに発展する可能性もあります。
一方、相続時精算課税を適用することがよい場合もあります。
今後、価格の上昇が見込まれる財産や、お子さんの有効な資産形成のため、その時にどうしても多額の資金を必要としている場合には、有効となります。
このように、安易に選択することをお勧めすることができない相続時精算課税ではありますが、慎重な計画の上、ご検討いただければと思います。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
最近、感染者数が減ってきて一安心しました。
とはいえ、肌寒い日が増えてきたので、普通に風邪などひかないよう気をつけたいものです。
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