実践!相続税対策
保証債務の履行と譲渡所得の特例【実践!相続税対策】第529号
2022.02.16
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
会社の借入金に対し、個人の不動産を担保に入れている場合、会社の事業が苦しくなったため、不動産を売却して借入金を返済する、ということがよくあります。
この場合でも、個人としては不動産を売却したのですから、譲渡所得の申告が必要となります。
買った価格よりも、売った価格が高ければ、譲渡所得が発生し、所得税・住民税を納付する必要があります。
ただ、売却したお金は、会社の借入金返済に充ててしまったので、税金を納付する資金がありません。
こんなときに、何か救済措置はないのか、という相談をたまに受けます。
この場合には、保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の特例があります。
この特例に該当する場合には、一定部分の所得がなかったものとみなされます。
保証債務の履行とは、次の場合です。
1.保証人、連帯保証人として債務を弁済した場合
2.連帯債務者として他の連帯債務者の債務を弁済した場合
3.身元保証人として債務を弁済した場合
4.他人の債務を担保するために、抵当権などを設定した人がその債務を弁済したり、抵当権などを実行された場合
上記の不動産を担保に入れている場合とは、4の場合に該当します。
その上で、特例の適用を受けるためには、次のすべてに該当する必要があります。
1.本来の債務者が、既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと
もう既に返済できないことがわかっているときに保証するのは対象外、ということですね。
2.保証債務を履行するために土地建物などを売っていること
保証債務の履行と不動産の売却には、明確な因果関係がある必要があります。
保証人が自分のお金で弁済した後に、不動産を売却しているような場合は、該当しないことになります。
3.履行をした債務の全額または一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと
すなわち、求償権の行使ができない場合で、会社であれば破産などをして、事業の継続ができない場合などです。
苦しいけれども事業を継続しているような場合は、これには該当しないことになります。
以上のような場合には、次のうち最も低い金額の所得がなかったものとされます。
1.肩代りをした債務のうち、回収できなくなった金額
2.保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額
3.売った土地建物などの譲渡益の額
保証債務の特例は、いざというときには助かりますが、要件は結構厳しいですので、安易に使うことはできないと考えた方がいいですね。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今回の冬季オリンピックは本当にいろいろなことが起こりますね...後味の悪いことが多いのが嫌でですが。
最後はいい話題が続くことを期待します。
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