実践!相続税対策
3,000万円控除と居住用不動産の贈与【実践!相続税対策】第540号
2022.05.04
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
都内に一戸建てのマイホームを所有して住んでいるが、子どもたちも社会人になり、独立して出ていった。
今は夫婦2人しか住んでいないので、広過ぎるし、3階建ての階段を昇り降りするのも、つらくなってきた。
子どもたちも、どうやらこの家には戻ってきそうもない。
今は不動産価格も高いようなので、売却して適度な広さのマンションに買い換えた方が、快適な暮らしが送れるのではないか、と考えている方も多いように思います。
ただ、不動産を売却すると、譲渡所得税がかかってきます。
マイホームを売却した場合には、居住用財産の3,000万円特別控除が使えますので、それで売却益がなくなれば、譲渡所得税はかかりません。
ただ、相続した物件や、購入した時期が相当前だったり、価格が相当上がっているような物件ですと、特別控除を引いても、税金が発生する場合があります。
そのような場合、不動産の名義がどうなっているかが重要です。
もし、夫婦2人で土地建物を共有しているのであれば、それぞれが、3,000万円特別控除を使うことができます。
すなわち、最高で6,000万円の売却益があっても、譲渡所得税がかからないことになります。
ただし、3,000万円控除を2人で受けるためには、2人とも建物を所有している必要があります。
居住用というのは建物があるからであり、建物を所有していることが3,000万円特別控除を使う条件となります。
さらに、譲渡益はほぼ土地から生まれますから、やはり土地も2人で持っている必要があります。
奥様が専業主婦だった場合は、マイホームの名義は、ご主人になっていることが多いですね。
また、相続した物件などは、どちらか相続した方の名義になっているでしょう。
そこで、マイホームを売却する場合で、相当の売却益が見込める場合は、夫婦2人で共有する形にしておけると良いですね。
そこで考えられるのが、贈与税の配偶者控除です。
これは、ご存知の方が多いかと思いますが、婚姻期間が20年以上である夫婦間で、居住用不動産の贈与あるいは居住用不動産を取得するための資金を贈与した場合に、贈与税の課税価格から、2,000万円を控除できる、というものです。
通常の基礎控除も合わせれば、2,110万円まで非課税で居住用不動産を贈与できる、ということになります。
その金額に合わせた持分を贈与することも可能です。
この贈与税の配偶者控除が使えるのであれば、マイホームを売却する前に、たとえば奥様に2,110万円分の土地建物の持分を贈与して、共有にする、ということが考えられます。
土地建物を贈与する場合の価格は、相続税評価額によりますので、相続税評価額で2,110万円は、時価ではもっと高くなり、3,000万円に近付いてくるかも知れません。
多少の贈与税を払っても、奥様が3,000万円控除をフルに使える金額まで贈与する、ということも考えられます。
ただし、注意しなければいけないのは、贈与税の配偶者控除は、「居住用」の贈与ですから、贈与した後に居住していくことが前提となっています。
したがって、贈与した後にすぐ売却したのであると、この贈与税の配偶者控除を使うことはできません。
少なくとも当面は住んでいくことを前提に、贈与する必要があります。
夫婦2人で共有にして、いずれ売却する、というのは良いのですが、売却が決まっており、その前に贈与するというのは、租税回避行為となってしまいます。
いずれは売却するかも知れないが、まだ何も決まっていないというときに、あらかじめ贈与しておく、ということであれば問題はないかと思います。
将来そのような可能性があるのであれば、検討してみても良いのではないでしょうか?
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
GW皆様いかがお過ごしですか。
どこも混んでいるようですね。
私は熱海の方に来ており、山の上の方の涼しいところで、今書いています。
熱海の街中は先ほど行ってきましたが結構暑いですね。
ただ、山の上はいい天気ですが涼しく快適です。ただ、風がちょっと強いですね。
ということで、制限解除された残りのGW、楽しみましょう!
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