実践!相続税対策
注目の最高裁判決 -マンションの評価-【実践!相続税対策】第541号
2022.05.11
おはようございます。
税理士の青木智美です。
今回は、令和4年4月19日に最高裁判決があった、マンションの評価額をめぐる判例について、一緒に見ていきたいと思います。
税理士業界はさることながら、相続税対策に関心を持たれている資産家の方々にも、大注目の事案でした。
概要を簡単に説明したいと思います。
今回の納税者は、いわゆる脱税をしたわけでもなく、国が定めた評価方法(財産評価基本通達)により、財産を評価しています。
ただ、その結果、相続税額が0円となり、納税にはいたりませんでした。
税務署は、この計算が不適当であるとして、納税者に訂正を求めました(更正処分)。
税務署には、財産評価基本通達によった評価が適当でないと認められるときは、評価額を設定できるという最強の通達があります。総則6項と言われるものです。
結果、納税者はこの更正に納得がいかず、裁判にいたりました。
これだけ見ると、納税者はきちんと定められた評価方法により評価を行っており、何ら問題がないように思います。
ただ、この方は相続があった数年前に、14億円弱で2棟のマンションを購入しており、かなりの資産家でした。
相続税は、平成27年より基礎控除の減額があって以降、一般のサラリーマンでも納税が必要となってきた、といわれています。
十数億円以上の資産を持っている方の納税が0円、というのは、確かに課税の平等が保たれていないようにも思います。
それではなぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
財産評価基本通達により評価すると、マンションの評価額が、時価よりも安く評価される傾向にあるためです。
これは、マンションは土地の上に多くの部屋があることから、実際の土地所有面積は非常に少なくなります。
財産評価基本通達では、所有面積に土地の価格(路線価等)を乗じて計算することから、所有面積が少ないと、その分評価額が下がります。
さらに借入金も巧みに利用することにより、相続税を大幅に圧縮することが可能となっています。
さて、今回の判例のポイントとしては、やはり、通達評価と時価に乖離がある場合、それだけをもって課税が不平等とはいえないが、租税負担の軽減を意図して行ったといえる場合には、通達評価に基づき評価しても、否認される可能性がある、ということです。
意志の介入というのは、いささかわかりずらい点もありますが、今回は、マンション購入の銀行借入理由のところに、『節税のため』という旨の記載があった点が、決定付けになったようです。
また、今回の相続人は、相続後売却していないマンションも更正の対象となっています。
相続人が売却せずに持っていれば見逃してもらえる、ということでもないということも、注意しておく必要がありそうです。
いずれにしても、極端な節税行為は、租税回避行為と見られて、原則的な評価方法が否認されてしまうことがある、ということは肝に銘じておきたいですね。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
物価が、今後もどんどん上がっていくように思います。
マンショの価格も下がると言われてていながらも、高止まりしていたり、世界情勢により、原油・資材が高騰していたり。
本当に何が起こるかわからないですね。
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