実践!相続税対策
名義預金と相続税・贈与税【実践!相続税対策】第543号
2022.05.25
おはようございます。
税理士の牛嶋洋一です。
相続税の記事や判例などを見ていると、「名義預金」というものがちょくちょく出てきます。
今回はこの「名義預金」(証券口座なども含みます)について、書かせていただきます。
たとえば、息子名義の銀行口座や証券口座などを作り、そこに資金を移し、息子のために父がその口座を管理していたとします。
ほどなくして、父が亡くなり相続が開始しました。
この場合、被相続人である父が管理していた息子名義の口座は、被相続人の相続財産となるでょうか?
名義が息子の名義になっているのだから、相続財産ではない、とも言えそうです。
しかし、税法は名義が誰かにかかわらず、実質的な所有者を、財産の所有者とする取扱いをします。
したがって、この場合の預金は被相続人の財産となり、相続税の課税財産となります。
このように、実質的な所有者は別にいて、口座の名義人が、単なる形式的な名義人である場合の預金を「名義預金」といいます。
名義預金と判定される要件の、主なものを挙げてみます。
まず、預金の原資を出したのは誰か、ということです。
原資を出したのが、名義人ではなく被相続人であれば、名義預金に近づきます。
次に、その預金の管理や、運用益の収受を被相続人が行っていたか、ということが問題となります
預金の管理を行っていたかどうかは、たとえば、通帳、キャッシュカード、届出印の管理、郵送物の受取り、ネットバンキングのID、PWの管理などを、被相続人が行っていれば、名義預金となります。
また、運用益の収受で言えば、証券口座の株式や投資信託の配当金や分配金を、被相続人がもらっていたかどうか、ということです。
このような要件に該当すれば、名義預金ということになります。
もし仮に、原資を出したのは被相続人であるが、その預金の管理や、運用益の収受者は名義人(この場合は息子)である場合には、名義預金ではなく、「生前贈与」となる可能性が高いです。
そうなると、原則として基礎控除額(110万円)を超える場合には、贈与税の申告が必要だった、ということになります。
さらに、その生前贈与が相続開始前3年以内に行われていた場合には、相続税の計算上は、その財産を相続財産に加算しなければなりません。
以上のように、実質所有者と名義人が違う場合には、名義預金や生前贈与など、様々な税務リスクを抱えることになります。
したがって、このような場合には、贈与契約を結んで正式に贈与を行って、実質所有者と名義人を一致させるほうが、後々のトラブルになりません。
その際には、住宅資金贈与や教育資金贈与の非課税特例などの適用も検討して、節税を考えていけばよいでしょう。
《担当:税理士 牛嶋 洋一》
編集後記
山口県阿武町の4630万円誤送金問題で、返金しなかった人は逮捕されてしまいましたね。
今まで見たことのないような大金をもらって舞い上がってしまったのかもしれませんが、サラリーマンの生涯賃金が2億円から3億円だと考えると、とてもこのお金だけでは一生暮らせないですね。
「悪銭身につかず」ということで、こつこつ働いて収入を稼ぐのが一番だと改めて思いました。
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