実践!相続税対策
相続時精算課税の基本【実践!相続税対策】第583号
2023.03.01
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
先週、相続時精算課税について書きました。
今まであまり使われてきませんでしたが、来年からは脚光を浴びそうです。
読者の皆様からも、いくつか質問、問合せをいただいております。
あまり使われていなかった、ということで相続時精算課税のことをあまり知らない方も、多いのかと思います。
そこで、今回は、相続時精算課税の基本的なことを、お話ししたいと思います。
まず、相続時精算課税は、贈与をした場合の課税方式の1つです。
贈与をした場合、年110万円までは贈与税がかからない、というのは、暦年課税といいます。
贈与税は、暦年単位(1月~12月)で受けた贈与を集計し、110万円を超えたら、翌年3月15日までに申告して、贈与税を支払う必要があります。
この暦年課税によらず、選択により、相続時精算課税を使うことができます。
選択は、贈与をした人ごとに行います。
たとえば、父からの贈与については、暦年課税ではなく、相続時精算課税を使う、という選択です。
母からの贈与については、選択しなければ暦年課税になります。通常は暦年課税が原則となっています。
相続時精算課税を選択できるのは、60歳以上の親や、祖父母などの、直系尊属からの贈与です。
兄弟や、親戚、他人からの贈与については、相続時精算課税を選択することはできません。
また、選択できる人は、18歳以上の方です。
注意するのは、贈与を受ける年の1月1日の年齢で判断する、ということです。
贈与を受けるときに、親が60歳であっても、その年1月1日の時点では、まだ59歳であれば、相続時精算課税を選択することはできません。
ただし、例外があります。マイホームを取得するために贈与を受ける(住宅取得等資金)場合は、贈与者の年齢の制限はありません。
55歳の父親から、住宅取得等資金の贈与を受けても、相続時精算課税を選択することができます。
相続時精算課税の選択は、贈与を受けるときにする必要はありません。
翌年、3月15日までの申告のときに、相続時精算課税の選択届を出せば、相続時精算課税を選択することができます。
ただし、本当に年齢要件だけには、気を付けてください。(私も失敗したことがあります)
相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については、2,500万円まで贈与税がかかりません。
ただし、その贈与を受けた財産の価額は、その贈与者の相続が起こったときには、相続財産に加算しなければならない、ということになっています。
贈与時には、税金はかけないけれども、相続時にまとめて税金を精算しますよ、という税制です。
既に財産は、子や孫に移っていますが、相続税の計算上で、そのように行うことになります。
相続時精算課税を選択すると、その贈与者から、その後に受けた贈与は、すべて申告をする必要があります。
2,500万円の枠は、選択をしたときから、相続が起こるまで、累計で管理することになります。
最初に、1,000万円を贈与すると、残りは1,500万円、次の年に、500万円を贈与すると、残りは1,000万円、というように申告をして、残高管理をしていきます。
相続時精算課税は、それが厄介ですね。たとえ1万円の贈与をしたとしても、申告をしなければなりません。
そこで、来年からは110万円までは申告しなくていいよ、という改正が入ることになりました。(先週書いたこと)
もう1点、注意点としては、一旦、相続時精算課税を選択すると、取消しはできない、ということです。そこは、よく考えて選択をする必要がありますね。
さて、累計の贈与額が2,500万円を超えると、そこからは贈与税が発生します。
2,500万円を超えた金額の20%の贈与税を支払う必要があります。
ここで支払った贈与税は、贈与者の相続の際、相続税から控除することになります。
まさに、相続税で精算する、ということですね。
相続時精算課税は、贈与する財産は何でも構いません。
現金贈与が多いですが、不動産の贈与でも、自社株の贈与でも構いません。というか、すべての贈与がこの枠組みに取り込まれます。
相続時精算課税で贈与した財産は、相続財産に加算されるということですが、加算する金額は、贈与時の価額となります。
現金であれば変わりませんが、不動産や自社株などは、評価する時点により、評価額は変わってきます。
贈与したときに、2,000万円の評価だった土地が、相続時には3,000万円に値上がりしていたとしても、2,000万円を相続財産に加算すればよいわけです。
その意味では、将来値上りしそうな財産を、相続時精算課税を使って、事前に贈与しておけば、節税になるということですね。
これは自社株もまさにそうです。
相続時精算課税は、祖父母から孫への贈与にも適用できます。
ただし、孫は相続人ではありませんので、相続権はなく、他の財産はもらえませんから、相続時に相続税を支払う資金で困るかも知れません。
また、孫の相続税は1世代飛び越すということもあり、相続税が2割加算されることになっています。
孫への相続時精算課税による贈与は、これらの点も考慮して行う必要がありますね。
以上、相続時精算課税制度をできるだけわかりやすく、説明してみました。
ご質問、ご相談がある方は、是非、お気軽にしていただければと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
3月に入りました。まだまだ寒いですが少しずつ春めいてきた感じがします。
コロナも大分意識しなくなり、マスクなしの時期も迫ってきてます。
どのような変化が起こるのかちょっと楽しみです。いよいよ本格的に元に戻って行くことができるのでしょうかね...。
メルマガ【実践!相続税対策】登録はコチラ
⇒ https://www.mag2.com/m/0001306693.html