実践!相続税対策
相続時精算課税2年目以降に注意【実践!相続税対策】第605号
2023.08.02
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
贈与税の申告には、暦年課税と相続時精算課税があります。
届出をしていなければ、通常は暦年課税が適用されます。
暦年課税は、多くの方がご存知のとおり、年間110万円の基礎控除があり、そこまでの贈与であれば、贈与税はかかりません。
それに対し、相続時精算課税は、これを選択する届出をした場合に限り、適用することができます。
これは贈与者と受贈者が、1対1のセットで届け出ることになります。
贈与者は60歳以上の親や祖父母、受贈者は18歳以上の子や孫の場合に、選択することができます。
ただし、この年齢の判定時期は、贈与年の1月1日で判定することに注意しなければなりません。
相続時精算課税を選択した場合は、2,500万円の特別控除枠があり、その金額までの贈与は贈与税がかかりません。
その金額をオーバーした場合は、オーバーした金額の20%の贈与税を支払うことになります。
注意すべき点は、相続時精算課税を選択した2年目以降も、その贈与者と受贈者の間では、ずっと続く、ということです。
すなわち、2,500万円の枠はその贈与者がなくなるまで、累積で管理することになります。
たとえば、3年目で贈与額の累計が2,500万円を超えたら、その超えた額の20%の贈与税を納付しなければならない、ということです。
この2年目以降の贈与に対する意識がない、という納税者が非常に多いですね。
相続時精算課税を選択した後でも、年間110万円までは、贈与税はかからないと思って、たとえば10万円の贈与をしても申告・納税していないケースが多いです。
このような少額贈与の不申告の問題もあり、2023年度の税制改正では、相続時精算課税にも110万円の基礎控除枠が設けられることになりました。
ただし、これは2024年の1月以降の贈与からとなります。
また、もう1点注意しなければいけないのが、相続時精算課税は期限内申告・届出がマスト、ということです。
相続時精算課税を最初に適用するときには、期限内(贈与した翌年の3月15日)に、相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります。
相続時精算課税により、贈与税なしで親から子に不動産を贈与しようと、贈与登記が終わっていても、上記選択届出書を期限内に出し忘れてしまった場合は、暦年課税により多額の贈与税がかかってきますので、注意が必要です。
また、2年目以降も、2,500万円の特別控除枠の残額の中で贈与をしても、期限内に申告をしなければ、特別控除額を差し引くことができません。
この場合には、特別控除を差し引かない贈与した額に対して20%の贈与税がかかってきます。
相続時精算課税を選択した場合は、その時点から贈与者の相続までつながっていくのだ、という意識を持っておくことが重要です。
1年だけの贈与で終わる話ではなくなってくる、ということですね。
《担当:北岡 修一》
編集後記
8月に入りました。もう十分猛暑を味わってはいるのですが、これからが夏本番、ということですね。長い夏になりそうです。皆様、体調管理には十分ご注意を!
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