実践!相続税対策
遺言書作成のすすめ【実践!相続税対策】第616号
2023.10.18
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
私どもの法人では、毎年数十件の相続税申告を行っておりますが、その中でも遺言書がある割合は少ないですね。
感覚的には、5~6件に1件という感じでしょうか。
昨年、全国の男女1800人に対して「遺言書の準備」に関するアンケートを実施した結果が、あるサイトに掲載されていました。
それによると、遺言を準備している割合は、50代で5.7%、60代で6.6%、70代前半で8.5%、75歳以上が13.0%となっていました。
75歳以上で急に増えていますが、それでも7人に1人もいかない、という状況です。
相続が起こったときに最もなってはいけない状況が、争族です。
兄弟や親族での争いは、遠慮がなかったり、子ども時代に戻ったような争いになり、第三者が見ていても本当に嫌なものですね...。
うちの子たちは仲がいいから大丈夫、と思っていても、いざという時には、今まで抑えていたものが出てきたりして、どうなるかはわかりません。
それを未然に防ぐことができるものが「遺言」でもあります。
60代、あるいは70代になったら、遺言を検討してみるとよいと思います。
遺言には主に、公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、まずは下書き的にでも自筆証書遺言を作ってみてはいかがでしょうか?
遺言の作り方は、ホームページで検索すればいろいろ出てきます。
最低限の形式さえ守れば、比較的自由に作成することができます。
自筆と言えども、財産目録などはパソコンで作ることもOKです。
遺言を作る際、注意しなければならないのは、遺留分です。
遺留分とは、各相続人が最低限もらえる財産の割合です。
たとえば、子が3人いる場合、長男に財産の全部を相続させると書くと、下の子2人には何も財産がいかなくなってしまいます。
この場合、下の子2人は遺留分を主張することができ、せっかく遺言を書いたのに、争族になってしまいます。
遺留分は、子が相続人の場合は、法定相続分の1/2となっています。
最低でも、法定相続分の1/2はそれぞれの子に保証されている、ということですね。
したがって、遺言を書く際には、その遺留分を侵害しないように書かないといけません。
ただし、遺留分がない相続人もいます。
それは、亡くなった方の兄弟姉妹です。
亡くなった方に、子どもがおらず、両親も既に亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。
夫が亡くなった場合は、奥様とご主人の兄弟姉妹が相続人になるということですね。
普段、夫の兄弟姉妹とはあまり付き合いがないことは多いでしょうから、それら相続人で遺産分割を話し合うのは、奥様にとっては気が重いのではないでしょうか?
ましてやそこで、兄弟姉妹から遺産分割を強硬に主張されようものなら、奥様の老後資金に支障をきたしてしまうことになりかねません。
このような、子どもがいないご夫婦の場合は、遺言書を作っておくことは必須ではないでしょうか。
ましてや、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、奥様に全財産を相続させる、と書いても何の問題もありません。
さらにもう一点、遺言執行者を遺言書の中で指定しておくことです。
遺言執行者を指定しておくことにより、相続による財産の移動や解約、登記の手続きを遺言執行者の印鑑で速やかに実施することができます。
これらを確実に行うためには、遺言書に不備がないよう公正証書遺言を最終的には作っておくのが良いですね。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
という私もまだ遺言書は作っておらずですので、そろそろ考える時期かも知れませんね。ただ、まだ若いし、うちの子どもたちは仲がいいと思っていますが...これが危ない考え方ですね(笑)。
メルマガ【実践!相続税対策】登録はコチラ
⇒ https://www.mag2.com/m/0001306693.html