実践!相続税対策
所有者として居住していたことがあるか【実践!相続税対策】第623号
2023.12.06
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
居住用の不動産(自宅)に関しては、所得税や相続税でいくつかの特例があります。
代表的なのは、所得税でいえば居住用財産の3,000万円特別控除、相続税でいえば特定居住用の小規模宅地特例(330m2まで80%評価減)です。
同じ居住用の特例ではありますが、所有者として居住していたことがあるか、というところでちょっとした違いがあります。
たとえば、夫が自宅の土地建物を所有し、夫婦2人で住んでいたとします。
この状況で、妻は老人ホームに入り、その1年後、自宅に住んでいた夫が亡くなり、妻が自宅の土地建物を相続します。
その後、もう自宅に戻ることはないということで、自宅を売却しました。
この場合に、居住用財産の3,000万円特別控除が使えるでしょうか?売却する期間等、要件は満たしているものとします。
妻は、自宅に居住しておりましたが、所有者として居住していたことはないため、残念ながら居住用財産の3,000万円特別控除は、使うことができません。
一方、上記の状況で自宅を売却せず、そのまま自宅を所有し、何年後かに妻が亡くなったとします。
この自宅土地建物については、長男が相続し長男は、いわゆる「家なき子」の要件を満たしていたとします。
この場合、居住用の小規模宅地特例は、使えるのでしょうか?
自宅の土地が、小規模宅地特例の対象となるかどうかは、老人ホームに入居した場合は、入居の直前において居住の用に供していたかどうか、で判断します。
この場合において、自宅の土地の所有者であるかどうかは問われていません。
妻は老人ホームに入居する直前まで、この自宅に居住していましたので、他の要件をすべて満たしている限り、長男は居住用の小規模宅地特例の適用を受けることができます。
所有者として居住していたかどうかは、特例の種類によって変わってくるということですね。
なお、上記で居住用財産の3,000万円特別控除は適用できない、と書きましたが、空き家の3,000万円特別控除を適用できる可能性があります。
夫は妻が老人ホームに入居後は、1人で住んでおり、その後は空き家になっているので、建築年など他の要件をすべて満たせば、空き家の3,000万円特別控除を適用することできます。
税務はいろいろな面から考えないといけないですね。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今年も残り3週間ちょっと。来年から贈与制度が変わったり、マンション評価が変わったりするので、暦年贈与や精算課税で大きく贈与するなら今年が最後のチャンスとなる場合もあるかも知れませんね。
まだ3週間ありますので、贈与を再度じっくり考えてみるのも良いかと思います。
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