実践!相続税対策
申告期限前に売買契約をした場合の小規模宅地特例【実践!相続税対策】第637号
2024.03.27
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
相続税申告における小規模宅地特例は、このメルマガで何度も取り上げているところです。
この特例を使えるか、使えないかは、相続税の納税額に大きく影響してくるからです。
その特例の要件として、多くの場合に共通するものに、相続税の申告期限まで、相続した宅地等を所有していること、というものがあります。
・同居親族が、被相続人の居住用宅地等を相続した場合
・家なき子が、被相続人の居住用宅地等を相続した場合
・生計一親族が、自己の居住用宅地等を相続した場合
などは、330m2まで80%評価減をすることができます。
・被相続人の貸付事業用の宅地等を相続した場合には、200m2まで50%評価減をすることができます。
・被相続人の事業用の宅地等を相続した場合には、400m2まで80%評価減をすることができます。
これらはすべて、相続税の申告期限までその宅地等を所有していることが、条件の1つとなっています。
したがって、納税資金や遺産分割のために、相続後に売却したい場合でも、相続開始後10か月経過するまでは、これらの土地を所有していなければなりません。
ただ、申告期限が過ぎたらすぐに換金したい、ということで、申告期限前に売買契約を締結した場合は、小規模宅地特例の適用を受けることができるのでしょうか?
結論から言えば、基本的には適用を受けることができます。
売買契約を締結しただけでは、通常は所有権が移転しないからです。
所有権が移転するのは、代金がすべて支払われ、所有権移転登記が完了したときになります。
売買契約を締結し、手付金を受領しただけでは、所有権は移転していませんので、相続税の申告期限まで所有しているという要件は満たしているものと考えられます。
なお、売買契約を締結したときに売買代金を全額受領している場合は、すでに引渡しが行われたものとして、小規模宅地特例の適用を受けることができなくなります。
また、相続人の譲渡所得の申告において、契約日を譲渡日として申告することも可能ですが、この場合には、小規模宅地特例の適用を受けられなくなる可能性がありますので、ご注意ください
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今日は、小規模宅地特例の継続所有要件についてお話ししましたが、唯一、継続所有要件がない場合があります。
それは、配偶者が自宅を相続した場合です。
この場合には、配偶者が相続した、というだけで小規模宅地特例の適用を受けることができます。
したがって、相続してからすぐに自宅を売却して老人ホームなどに入居しても、小規模宅地特例はOKということになります。
配偶者は1億6千万円までの税額軽減もありますし、共に財産を築いてきたということで、優遇されているのですね。
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