実践!相続税対策
事業用に不動産を使用している場合【実践!相続税対策】第648号
2024.06.12
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
このメルマガでは、居住用(自宅)の敷地を相続する場合の小規模宅地特例については、よく取り上げております。
居住用の宅地は、330m2まで80%評価減ができる、という特例です。
この小規模宅地特例には、居住用の土地よりもさらに大きな評価減ができる、事業用の小規模宅地特例もあります。
事業をやられている方であれば、この小規模宅地特例の活用も考えてみてはいかがでしょうか?
事業用の小規模宅地特例には、個人で事業をしている場合の特例と、会社組織で事業をしている場合の特例の2つがあります。
いずれも、400m2まで80%の評価減ができますので、居住用よりも大きい、ということになりますね。
しかも、居住用と事業用の特例のみを使う場合は、それぞれ限度面積までフルに評価減をすることができます。
すなわち、居住用330m2+事業用400m2の計730m2まで、80%もの評価減ができる、ということです。
これは大きいですね!
事業をしている方は、是非、活用を考えると良いと思います。
なお、この事業には、不動産貸付業は除外されます。
アパートやマンションの不動産貸付業の場合には、別途200m2まで50%評価減ができる小規模宅地特例が適用されることになります。
しかも居住用の小規模宅地特例も使う場合には、按分しますので、200m2をフルに評価減することはできなくなります。
さて、事業用の小規模宅地特例には、個人事業の場合と会社組織で事業をやっている場合の2種類がある、という話をしました。
個人事業の場合は、さらに2種類あります。
1つは、被相続人がやっていた事業を、相続人が引き継ぐ場合、もう1つは、被相続人と生計を一にする相続人が事業を行っていた場合です。
相続人が事業を行っていた場合は、被相続人と生計一という要件が付きますので、これは結構ネックになります。
その点、会社組織で事業を行っている場合は、要件が比較的ゆるやかです。
この場合の特例は、「特定同族会社事業用宅地」の小規
模宅地特例といいます。前述のとおり400m2まで80%評価減ができる特例です。
この場合の要件は、
1.被相続人の親族等で50%超保有する法人に賃貸して事業の用に供されていること
2.その土地を相続した親族が、相続税の申告期限までその法人の役員であり、その土地を申告期限まで保有していること
3.建物の所有者は、その法人、被相続人、または生計一親族のいずれかであること
上記のとおり、親族で50%超保有していればよく、その法人の経営者は、被相続人でなくてもよいし、生計一親族でなくても構いません。
父親が所有する土地建物を、別生計の子が経営する会社が賃借し、事業を行っている場合は、これに当てはまるわけです。
そうなると、この土地は400m2まで80%評価減ができますので、これに該当するケースは結構あるのでは、と思いますね。
ただし、前述したとおり、会社の事業が不動産貸付業である場合には、上記に該当しません。
先日、ある会社では、父親の土地建物を子が経営する会社が賃借して事業を行っていました。
ただ、賃借しているのは子が経営する不動産管理会社で、その不動産管理会社が、子が経営する別会社の事業会社に転貸していました。
これでは、80%評価減の対象になりません。不動産貸付業を行う会社に貸しているからです。
父親が事業会社の方に直接貸していれば、80%評価減の対象になりますので、そのようなアドバイスをしました。
また、子が経営する会社が第三者から建物を賃借して事業を行っている場合、相続税対策として、父親がその物件を購入してしまう、ということも考えられます。
現金あるいは借入金で不動産を購入することにより、相続税評価額が下がり、さらに、上記の特定同族会社事業用宅地になるので、400m2まで80%評価減ができるという一石二鳥の相続税対策です。
小規模宅地特例というと、居住用ばかりに目がいくことが多いですが、事業用の小規模宅地特例も考えてみると、相続税対策の幅が広がってきますね。
是非、会社経営をされている方などは、検討してみると良いかと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
先週末、会員であるロータリークラブの事業で、ネパールに行ってきました。農村でカースト制度の名残がある地域
に井戸を寄贈するという事業です。大変ハードな行程で、充実感はありましたが、行ったメンバーは皆帰国後体調を崩している状況です。とは言え疲れが原因で、変な病気ではありませんのでご安心を(笑)。
メルマガ【実践!相続税対策】登録はコチラ
⇒ https://www.mag2.com/m/0001306693.html