実践!相続税対策
借地権はどちらにあるか?【実践!相続税対策】第653号
2024.07.17
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
借地権という言葉は、皆様ご存知かと思いますが、実務上これを登記することは、ほとんどありません。
借地権は、地上権あるいは賃借権として登記することができます。
ただ通常は、建物を登記することと、土地賃貸借契約を結ぶことによって、借地権があることが認識されます。
そのように借地権は登記で直接確認できないため、借地権があるのか、ないのか、どちらにあるのかが、わからなくなることがあります。
土地建物に、何らかの名義の変更があった場合、いつの間にか借地権が他者に移ったことになり、多額の贈与税がかかったりすることがあるので、要注意です。
たとえば、親が借地に自宅を建てて住んでいたとします。
家が大分古くなってきたので、子が同居するのを機会に、子のお金で二世帯住宅を建てたとします。当然、建物は子の所有になります。
この場合、親は地主から土地を借りていますので借地権がありました。
ただ、その家は取壊し、子が新たな家を所有することになったので、親の借地権はどうなってしまったか、ということです。
何もしなければ、親の借地権が子に移ったことになります。すなわち、親から子に借地権が贈与された、とみなされます。
借地権は、土地価額の60%~70%の地域が多いですから、そうなると、多額の贈与税がかかってきてしまいます。
そこで、このような場合には、親の借地権者の地位は変わらず、子に借地権を使用貸借(無償貸与)している旨の確認書を、親と子と地主の連名で税務署に提出しておく必要があります。
これを「借地権の使用貸借に関する確認書」といいます。
これにより、借地権のみなし贈与の認定を回避することができます。
また、上記の例で親の借りている土地を、子が地主から購入したとします。そうなると、子が土地を所有し、親が建物を所有している状態になります。
親子の関係なので、その後地代の支払いはなくなることが多いですね。
そうなると、子が親に土地を使用貸借していることになり、この場合は、親が持っていた借地権が消滅し、子に移ったものとみなされます。
すなわち、親から子に対する借地権の贈与があったものとみなされ、多額の贈与税がかかってきます。
これを回避するためには、親が借地権を変わらずに持っていることを申し出る「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を、税務署に提出する必要があります。
さらに上記とは逆に、親が土地を所有していて他人に貸していたとします。
すなわち、親が地主で他人が借地権を持っているということですね。
この場合に、たとえば子が、その借地の上の建物と借地権を買取ったとします。
その後、子は親に対して地代は支払わない場合、これもやはり、親が子に土地を使用貸借していることと扱われます。
そうなると、子が買取った借地権が親に移ったものとみなされ、親に贈与税がかかる、ということになります。
これを避けるためには、上記と同じ「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を、税務署に提出する必要があります。
以上のように借地権は、登記されていないので、誰が持っているのかが非常にわかりづらことがあります。
土地や建物の名義が変わるとき、土地と建物の所有者が違うときなどは、借地権のことをよく考えておく必要がありますね。
是非、これは専門家である税理士に相談して欲しい、と思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今日のメルマガは少しわかりづらかったかも知れませんね。
なかなか、簡単にわかりやすく書く、というのは難しいものですね。
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