実践!相続税対策
代償分割か、換価分割か【実践!相続税対策】第655号
2024.07.31
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
主な相続財産が不動産1つしかない場合などは、その不動産を売却して、そのお金を相続人で平等に分けよう、ということがあります。
その場合、遺産の分割方法として、代償分割と換価分割がありますが、どちらが良いか聞かれることがよくあります。
代償分割は、不動産を相続人の誰か1人が相続した上で売却し、他の相続人には代償金を支払う、という遺産分割の方法です。
代償金は、必ずしも不動産売却後に支払うということでなくてもよく、とりあえず自分の手持ち資金で払っておき、後はゆっくり売却するということでも構いません。
もちろん、売却しないという選択肢もあります。
ポイントは、遺産分割協議書に不動産を取得する代償として、他の相続人に代償金をいくら支払うと記載しておくことです。
これにより、他の相続人に支払った代償金は、あくまで遺産の分割金であることが明確になります。
この記載がない場合は、支払ったお金が贈与と認定され、贈与税が課されてしまう可能性があります。
換価分割は、その不動産を共有で相続した上で売却し、その売却金を共有持分に応じで分ける、という分割方法です。
たとえば、相続人が3人いた場合は、不動産を1/3の割合で相続するなどです。
この場合は、3人で共有登記をするのが基本です。
ただし、全員が売却にからむことになり、手続きが煩雑になるため、換価分割を目的として1人が代表して相続し、売却金を1/3ずつ取得する旨を遺産分割協議書に記載して行うことも可能です。
代償分割も換価分割も、不動産を売却して、そのお金を分ける、ということでは同じです。
ただし、手続きや税金面ではかなり違ってきますので、どちらの方法で分割するのかは、よく考えておく必要があります。
まず、代償分割の場合は、遺産分割協議書に代償金の金額を記載します。
したがって、不動産がいくらで売却できるのか、売却のための費用がどのくらいかかるのか、売却益に対する税金はいくらかかるのか、などを試算しておく必要があります。
そうでないと、代償金の金額を計算することができません。代償金を多くし過ぎてしまうと、不動産を取得し売却する人が損してしまいます。
この点、換価分割の場合は、実際に売れた金額を割合で分ければよいので、あらかじめ厳密に試算しておく必要はありません。
税金面では、代償分割は不動産を取得して売却した人1人が譲渡所得の申告をすれば済みます。
換価分割の場合は、たとえば3人であれば、3人がそれぞれ譲渡所得の申告をしなければなりません。
換価分割の場合で、便宜上1人で不動産を取得した場合であっても、実質は3人で取得しておりますので、やはり3人とも譲渡所得の申告が必要になってきます。
また、その不動産が亡くなられた方の居住用であり、かつ、相続人の1人が同居していた場合は、相続税の申告において、居住用の小規模宅地特例を使うことができます。
土地を330m2まで80%評価減ができる、という特例です。
これをフルに適用するには、代償分割で同居していた相続人が不動産を相続し、申告期限までは売却せずに居住している必要があります。
したがって、このような場合には代償分割の方が良い、ということになります。
さらに、その後不動産を売却した場合には、その方は住んでいるわけですから、居住用の3,000万円特別控除を使うことができます。
これにより、譲渡所得税を大幅に減らすことができます。
同居していた人がいる場合は、代償分割ということになりますね。
なお、被相続人が1人で住んでいた不動産の場合には、相続後空き家になります。
この場合、相続後にその不動産を売却し、要件を満たせば、空き家の3,000万円特別控除の適用を受けることができます。
相続人が複数で相続した場合は、それぞれが売却益から3,000万円を控除することができます。(ただし、2024年の譲渡より3人以上で相続した場合は、1人あたり2,000万円の控除と改正になっております。)
したがって、このような場合には、換価分割の方が良いということになります。
以上、代償分割か換価分割かは、それぞれの相続の状況によって異なってくる、ということですね。
したがって、状況をよく検討した上で、専門家にも相談して分割の方法を決めることが大事かと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
猛暑というか酷暑というか、連日続きますね。
本当に気を付けないと体調崩しそうですね。
是非、水分補給をまめに、できるだけ直射日光を避けるようになど、ご注意ください。
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