実践!相続税対策
取得費加算の特例を活用してみよう【実践!相続税対策】第665号
2024.10.16
皆様、おはようございます。
資産税部の太田遼です。
今後、活用する予定がない不動産を相続した場合などは、固定資産税がかかったり、管理が必要となってくることから、その不動産の売却を考えることがあるかと思います。
そんなときに知っておきたいのが「取得費加算の特例」です。
この取得費加算の特例は、不動産を売却して譲渡益(売却益)が発生した場合に、その譲渡益にかかる所得税を軽減できる特例です。
今回は、この取得費加算の特例について、どのような要件があるのか、また、注意しなければならない点などを、お伝えしていきたいと思います。
取得費加算の特例とは、具体的には、相続税の一部を、譲渡所得を計算する際の取得費に加算することで、所得税の軽減を行える特例となっております。
ここで、いったん通常の譲渡所得の計算式を見てみましょう。
【通常の譲渡所得の計算式】
(1)売却代金
(2)取得費+譲渡費用
(3)((1)-(2))×税率
売却代金から控除できる費用は、上記のとおり取得費と譲渡費用(仲介手数料や印紙代等)となっております。
取得費加算の特例を適用した場合は、譲渡所得の計算式は次のとおりとなります。
【取得費加算の特例を用いた際の譲渡所得の計算式】
(1)売買代金
(2)取得費+相続税の一部+譲渡費用
(3)((1)-(2))×税率
取得費に相続税の一部を加算することで、売却代金から控除される費用が増加するため、その分、譲渡益が少なくなります。
これにより、所得税の軽減につながってきます。
この取得費加算の特例を利用するためには3つの要件があり、この要件をすべて満たさなければなりません。
<要件1>
相続や遺言により財産を取得した人であること。
<要件2>
その財産を相続により取得したことで、その人に相続税が課税されていること。
<要件3>
その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
なお、遺産分割協議についても、特別に期限は設けられてはいないものの、申告期限内(3年10か月)に成立させることが大事となってきます。
また、複数の不動産を相続する場合は、どの不動産に取得費加算の特例を適用すれば節税効果が高くなるか、慎重に検討することも大事です。
なお、代償金を支払って取得した不動産を売却した場合、取得費に加算できる相続税額の算出方法が通常とは異なってきます。
通常よりも、取得費に加算される金額が減少するため、取得費加算を使う予定の場合は、代償分割はできるだけ避けた方がよいかと思います。
このように、不動産を相続しても居住や活用の予定がない場合は、取得費加算の特例を適用して売却することも選択肢に入れてみてもよいかもしれません。
なお、期限を過ぎると特例が適用できなくなってしまうため、相続後に譲渡の予定がある場合などは、申告を行う税理士にご相談いただければと思います。
《担当:資産税部 太田 遼》
編集後記
最近、お好み焼きやもんじゃ焼きにはまってきていることから先日ついに鉄板プレートを買ってしまいました。
寒くもなってきたので、家でアツアツの粉もんを食べれることに幸せを感じております。
季節の移り変わりにあたるこの時期、温かいものを食べて皆様も体調を崩されないようご自愛くださいませ。
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