実践!相続税対策
家族信託の効果と税務【実践!相続税対策】第683号
2025.02.26
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
家族信託をご存じの方も多いかと思います。
ただ、なかなか実務でお目にかかることをそう多くはないのですが、今年の確定申告のご相談でそのような方がいました。
若干アレンジしてお話ししますが、その方は父親が1人で住んでいる実家について、数年前家族信託を行いました。
父親が委託者、その娘さんが受託者、父親が受益者となる信託契約です。
信託契約をすることにより、財産の管理や処分を受託者が行うことができるようになります。
今回のご相談者も、将来父親が認知症等になった場合に財産の管理や処分ができるようにしておくためでした。
信託契約を行うと、実家の不動産の名義は娘さんになります。同時に信託条項が登記されます。
上記の場合は、委託者と受益者が同じである、いわゆる自益信託になります。
自益信託の場合には、信託契約により不動産の名義が変わっても、譲渡や贈与として課税されることはありません。
数年後、父親が認知症になり、老人ホームに入ることになりました。
実家が空き家になったため、昨年、実家の不動産を売却し、その資金で賃貸不動産を購入しました。
今回は、その申告および新しい不動産の登記についてのご相談でした。
実家の不動産の売却については、名義は娘さんですが受益者は父親であるため、父親が譲渡所得の申告をする必要があります。
実家はお父様が老人ホームに入られてから、3年を経過する日の年末までに売却できていましたので、3,000万円特別控除を使うことができ、税金も発生しませんでした。
登記名義については、受託者である娘さんの名義になりますが、あくまで父親からの信託財産であるため、買い換えた不動産にも、信託条項を登記する必要があります。
これは登記を行う司法書士さんに伝えなければいけないことです。
単に娘さんの名義にするだけだと、その時点で贈与税がかかってくる可能性があります。
家族信託をしておかなかったら、実家について処分することもできず空き家のまま放置するしかなかったので、その娘さんは、本当に家族信託をしておいて良かった、と言っていました。
家族信託の典型的な例かと思いますが、このような場合には、非常に効果的な方法だと改めて思いました。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今日は少し暖かくなってきましたね。
大分寒い日が続いていましたので、少しでも暖かくなるとほっとします。ただこのまま暖かくなるということでもなさそうで、寒暖を繰り返しながら春になっていくのでしょうね。
お花見の案内なども大分多くなってきており、楽しみです。
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