実践!事業承継・自社株対策
会社への自己株式譲渡【実践!事業承継・自社株対策】第104号
2022.06.16
Q 当社は、不動産賃貸業を行っている同族会社です。
父から代表を受け継いでおりますが、株式は大部分を父が所有しています。
当社は、資産管理会社に該当するため、事業承継税制は使えないとのことです。
ただ、会社には資金が結構あるため、相続の際には会社から借りるか、自己株式として会社に譲渡するかしたいと思います。
自己株式の譲渡は、税金が高いと聞きましたが、どのような課税になるのでしょうか?
A 会社に自己株式を売却する場合は、まず、その売却価格に注意しなければなりません。
特に同族株主である場合には、所得税基本通達59-6を参照して売却価格を計算する必要があります。
たとえば、会社規模は小会社として評価すること、純資産価額の計算においては、土地や上場有価証券は時価で評価すること、簿価との評価差額がある場合は法人税額を控除することはできない、などとなっています。
そのため、比較的高い金額となる可能性があります。ただし、相続税納税資金として売却するのであれば、高い方が良いのかも知れません。
当然、株式を売却した場合は税金がかかってくることになります。
通常、自己株式を発行会社に売却した場合は、資本金等の払い戻し部分と、利益剰余金の払い戻し部分に分けて課税されることになります。
利益剰余金の払い戻し部分は、みなし配当となり、配当所得として総合課税されます。
総合課税は他の所得と合算して、累進税率により課税されます。
売却価格が高いと、税率は住民税も合わせて最高55%にもなる可能性があります。
したがって、通常は自己株式の売却は、同族株主の場合はあまりお勧めできません。
ただし、相続の場合には特例があります。
それは、相続税の申告期限後3年以内に、自己株式を発行会社に売却した場合は、譲渡所得として扱ってもらうことができる、ということです。
譲渡所得であれば、譲渡益に対して一律20.315%の税率で済むことになります。
さらに、相続税の取得費加算も適用することができます。
すなわち、その株式の相続にかかった相続税を、譲渡所得から控除することができます。
相続した株式を、相続税の納税資金に充てるために譲渡したことを考慮した税制になっていると言えます。
会社に資金があるのであれば、このような特例を使った納税資金対策を考えることができます。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
自社株対策、事業承継対策というと、生前にいかに株式を後継者に移すか、あるいは株価をいかに下げるか、ということが中心になりますね。
ただ、上記のように納税資金を確保する、ということを考えておくという対策もあります。
様々対策をした後は、いかに相続税が払えるか、ということが重要になってきますね。
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