実践!事業承継・自社株対策
甥への株式譲渡【実践!事業承継・自社株対策】第112号
2022.08.11
Q 当社は、オーナー社長である私の親族が過半数を持っている同族会社です。
役員や社員も一定の役職以上の者が、多少の株式を持っています。
今回、社員である甥が昇進したため、私の持株から株式を譲渡したいと考えています。
親族には、配当還元価格で譲渡できないと考えていますが、やはり難しいのでしょうか?
A 親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)で、50%以上の株式(議決権ベース)を持っているので、その同族株主グループの者は、原則的評価(類似業種比準価額・純資産価額をベースにした評価)になります。
甥は、社長からみて3親等の血族になりますので、このグループに入ります。
ただし、譲渡後の株式の議決権割合が5%未満である場合は、配当還元価格で評価できる可能性があります。
それは、甥が中心的な同族株主でない、場合です。
この中心的な同族株主であるかどうかは、次の者の議決権割合の合計が、25%に満たない場合です。
甥、甥の配偶者、甥の直系血族(親、祖父母、子など)、甥の兄弟姉妹、甥の一親等の姻族(配偶者の親)、及びこれらの者が25%以上の議決権を持つ一定の会社
ただし、甥が譲渡を受けた後の株式数をベースにして計算してください。
これが25%を超えなければ、甥は中心的な同族株主に該当しません。
その上で、譲渡後の甥の議決権割合が5%を超えなければ、甥に配当還元価格で譲渡することが可能です。
甥が中心的な同族株主でなく、また、今まで株式を持っていなければ、5%未満までは配当還元価格で譲渡することができる、ということですね。
ただし、甥が昇進して役員(常務など役付き役員)になるようであれば、その場合は、配当還元価格で譲渡することはできません。
評価方式の判定は、結構複雑ですので、専門の税理士に相談することをお勧めします。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
創業から年数の経っている歴史のある会社は、やはり株主が分散していることが多いですね。
親族であっても、かなり遠い親戚である場合などは、配当還元方式が使える場合も結構ありますので、慎重に判定することが必要ですね。
これに関連会社などがからんでくると、かなり複雑になってきますね。
そのような相談も最近増えてきました。
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