実践!事業承継・自社株対策
相続人等に対する株式の売渡し請求【実践!事業承継・自社株対策】第121号
2022.10.13
Q 当社は創業70年を超える会社であるため、株式が親族に広く分散しています。これ以上、相続等で株式が分散しないよう、相続があった際には株式を買い取っていきたいと考えています。
相続人に対して、株式の売渡し請求ができるそうですが、その手順や注意点について、教えてください。
A 会社法では、株式(譲渡制限株式に限る)を承継した相続人に対し、その株式を会社に売渡すことを請求することが出来る旨を、定款で定めることができる、こととなっております。
この売渡し請求が行われた場合は、相続人はこれを拒否することができません。
また、通常、特定の株主から自己株式を買取る場合、他の株主は、売主に追加することを請求することができますが、この場合には追加請求はできません。
相続人等に対する売渡し請求を行うためには、まずは、定款に「相続人等に対する株式の売渡し請求」条項を、追加する必要があります。
これは、株主総会の特別決議により行います。
その上で実際に行う際には、これも株主総会の特別決議により、対象となる株主名や売渡し請求をする株式数等を決議します。
この際には、売渡し請求を受けた株主は、売渡し請求決議において、議決権を行使することができません。
なお、相続人に対する株式の売渡し請求は、相続があったことを知った日から1年を経過したときは、これを請求することはできなくなります。
売渡し請求する際の買取り価額については、相続税評価額や時価純資産価額などに基づき、相続人との協議により決めることになります。
折り合いがつかない場合には、請求の日から20日以内に裁判所に対し、売買価格決定の申立てをすることができます。
なお、買取り価額の総額は、剰余金の分配可能額の範囲内である必要があります。
相続人に対する株式の売渡し請求は、大株主に対しても行うことができますので、この点は注意しておく必要があります。
売渡し請求決議においては、請求される側は議決権を行使することができなくなりますので、ヘタをすると会社乗っ取りに悪用される可能性があります。
このような場合には、その前に役員解任決議等ができるよう、オーナーの株式を誰が相続するのか、遺言を作っておくことが重要です。
相続人に対する株式の売渡し請求と、遺言作成はセットで考えておいた方が良いのではないでしょうか。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
株式の分散について悩みを抱えている会社は多いですね。
同族会社で譲渡制限のある会社などは、やはり経営を実際に行っていく人に株式を集約していくことが、経営の安定上も大事かと思います。
今回のような方法も含めて、様々な方法で株式を集約する方法を考えていくことをお勧めします。
是非、ご相談いただければと思います。
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