実践!事業承継・自社株対策
所在不明株主がいる場合の株式集約【実践!事業承継・自社株対策】第133号
2023.01.12
Q 私は父から引き継いだ会社の二代目経営者で、発行済み株式の8割を保有しています。
父は親族外の幹部社員に株式を持たせていましたが、その社員は既に亡くなっており、相続人の所在は不明で、連絡もつかない状況が継続しています。
将来の会社売却も視野に、株式の集約を進めておきたいのですが、このような場合どのように対処したら良いのでしょうか。
A 会社法に規定された手続きに沿った、所在不明株主の株式買取制度の活用が検討可能です。
この制度は、次のいずれにも該当する株式に関して、所定の手続きを経ることで、所在不明株主の株式を売却することができるものです。
(1)株主名簿に記載された住所等に対する通知・催告が、5年以上継続して到達しない
(2)その株主が5年間継続して剰余金の配当を受領していない
この条件を満たした株式について、取締役会で処分方法の決議を行います。
その後、株主等の利害関係者に対して、当該処分に関する異議があれば申述すべき旨の公告と、所在不明株主に対する個別催告を行うことになります。
異議申述期間経過後、任意の者に所在者不明株式を売却する場合は、裁判所に対して株式売却許可の申し立てを行います。
なお、株式の売却代金は、所在不明株主に帰属しますので、供託する方法が一般的です。
また、2021年8月に施行された、経営承継円滑化法の一部改正にて、一定の要件を満たした会社が都道府県知事の認定を受けることで、上記5年の期間が1年に短縮される措置が設けられています。
その他、特別支配株主の株式等売渡請求の選択も考えられますが、特別支配株主になるには、議決権の10分の9以上を占めることが必要です。
本件では、8割の株式を保有されているとのことですので、普通株式だけの場合は、残り1割を他の知れたる株主から取得する必要があります。
特に会社売却を検討されるケースでは、所在不明株主の存在が問題になる可能性が高いですので、早めに対策に着手されることをご検討ください。
《担当:税理士 藤井 裕生》
編集後記
年末、久しぶりに地元(兵庫県)に帰省しました。
テレビを付けていると自分が子供のころから見ていたCMが流れてきて、懐かしい気持ちになると同時に、変わらない昔ながらの画質に、良い意味で衝撃を受けました。
関西の人なら必ず見たことがある、赤ちゃんとヒヨコが出てくる置き薬会社のCMで、キャッチーなメロディーも有名です。
調べてみると1986年から流れているようで、認知度向上の観点から、あえて変えないというのも一つの戦略だと感じた年末でした。
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