実践!事業承継・自社株対策
自社株の承継と遺留分【実践!事業承継・自社株対策】第143号
2023.03.24
Q 当社は、社員約100人の非上場会社です。
私の持つ自社株については、後継者である長男に贈与および遺言により、承継させようと考えております。
長男の他に子が2人おり、彼らには不動産や預金などを相続させていきます。現時点の相続税評価では遺留分の侵害はないと言われていますが、何か注意することはありますでしょうか?
A 遺留分の計算は、相続開始のときにおける時価によって計算されることになります。
したがって、自社株の贈与時点で遺留分の侵害はなかったとしても、相続開始時点で株価が上がっていると、遺留分侵害となる可能性があります。(遺留分の計算は、相続開始前10年内にされた贈与も取り込まれます。なお、子の遺留分は法定相続分の1/2となります。)
また、遺留分の計算における評価は時価によることになっており、自社株の評価については、相続税評価のように明確な決まりはありません。
各資産を時価で評価した時価純資産価額や、将来収益から株価を求めるDCF法などが採用されることもあります。
貴社は社員約100人とのことですので、相続税評価上は大会社となり、その株価は類似業種比準方式で評価されているのではないでしょうか?
類似業種比準価額は、純資産価額よりも相当に低くなることが多いですので、時価純資産価額で計算すると、現時点でも、遺留分を侵害している計算になるかも知れません。
是非、ご確認いただければと存じます。
将来の遺留分侵害の問題をなくすためには、子どもたちを集めて、会社の承継や相続について、自分の考えや気持ちをよく話し、納得してもらうことです。
その上で、会社を引き継がない子には遺留分の放棄手続きをしてもらえれば、なお良いかと思います。
遺留分の放棄には、家庭裁判所の許可が必要となります。
その他にも、経営承継円滑化法による、除外合意や固定合意を利用する方法もあります。
除外合意とは、後継者が取得した自社株については、遺留分の対象財産から除外する、というものです。
固定合意とは、後継者が取得した自社株について、遺留分の計算に含める金額を、合意した時の価額に固定するというものです。
これにより、その後に自社株の評価額が上がっても、遺留分の計算には影響を与えない、ということになります。
自社株の贈与や、遺言の作成に関しては、是非、上記のような点に注意していただければと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
花見の時期ですね!週末花見をする予定がありますが、
どうもお天気が良くないようですね。悩みどころです...。
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