実践!事業承継・自社株対策
会社分割後、株式を売却【実践!事業承継・自社株対策】第153号
2023.06.16
Q 私が経営するA社には、100%子会社のB社があります。この度、B社の株式を第三者に売却することになりました。ただ、A社もB社の事業にからんでおり、その
資産負債をB社に移してから、売却する予定です。
会社分割という方法があるとのことですが、注意点などを教えていただけますか?
A 会社分割には、新設分割と吸収分割があります。
ご質問のようなケースは、A社の事業の一部を切り出して、B社に吸収させる「吸収分割」を使うと良いのかと思います。
また、会社分割には、分割対価の受け取り方により、分社型分割と分割型分割があります。
分割の対価は、通常は分割承継会社の株式を受け取ることになります。ご質問の場合はB社の株式です。
その株式を分割元である分割会社が受け取るのが、分社型分割です。
また、その株式を分割会社の株主が受け取るのが、分割型分割です。
ご質問のケースは、A社が100%親会社であるので、A社
が対価を受け取る分社型分割が良いのでは、と思います。
この場合、分割前も分割後もA社が100%親会社であることに変わりないので、対価を受け取らない無対価分割も考えられます。
ただし、これはまた別な問題が生じてきます。
会社分割は、一定要件を満たすことにより、分割により移転する資産負債を簿価で移転できる、すなわち譲渡損益が発生しない税制適格分割になります。
すなわち、譲渡益が発生しても税金がかからない、ということです。
100%完全支配関係がある場合の一定要件とは、分割対価として金銭等を交付しないこと、そして分割承継会社(B社)の株式を継続して保有していくことです。
今回の場合は、分割後にB社の株式を売却することが決まっているとのことで、株式の継続保有要件を満たさないため、適格分割にはならないことにご注意ください。
そうなると、移転する資産負債を時価で評価して、移転する必要があります。
土地や有価証券など含み益がある資産がある場合は、譲渡益が発生し、課税されることになるので要注意です。
そのような資産があるかどうか確認する必要があります。
ただし、100%完全支配関係がある会社での譲渡になりますので、グループ法人税制が適用されます。
グループ法人税制が適用されると、譲渡損益調整資産を譲渡して、譲渡損益が発生してもグループ外に出るまで損益が認識されません。
譲渡損益調整資産とは、固定資産や有価証券などで簿価が1,000万円以上の資産をいいます。これ以外の資産には課税が発生することになります。
ただ、分割後、B社株式を第三者に譲渡するとのことなので、この時点でA社の譲渡損益はすべて実現することになります。
その他、会社分割は公告等が必要になり、一定の時間がかかりますので、株式の売却スケジュールなどとのすり合わせが重要になってきます。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
会社分割はなかなか難しい問題が多いですね。
是非、税理士に相談していただければと思います。
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