実践!事業承継・自社株対策
投資育成への株式譲渡【実践!事業承継・自社株対策】第156号
2023.07.06
Q 私がオーナーとなっている会社のうち1つは不動産賃貸業をしています。
最近ネットニュースで、マンション評価が改定される内容の記事を見ました。
会社の株式評価に影響があることはありますか。
A まず、現状公表されている内容は、マンション一棟ではなく、区分所有マンションの1室が対象となっております。
マンションの評価については、以前から路線価などによる評価が、時価と乖離しているという問題があり、それについて検討がされていました。
令和5年6月30日に評価についての検討会の内容を、国税庁が公表しました。
これによると、区分所有マンション1室について一度時価により評価し、安全性や戸建との均衡などから、その時価の60%により評価するようです。
時価評価の方法は、以下の要因を基準に一定の倍数を算出し、従来の評価額に乗じる方法になります。
【市場価格との乖離要因】
(1)築年数 (2)総階数 (3)所在階 (4)敷地持分狭小度
これについては、すでに国税庁側で分析した数字があるのでそれを自身が所有しているマンション1室の情報を当てはめていく必要があります。
これにより、現在の評価の数倍になることも予想されます。
なお、この評価方法は確定ではなく、これから改正の通達案が作成され、国民に意見公募がされるため、内容が変更になる可能性はあります。
このため、会社の株式評価については、まずは、正確な情報がもう少し出てからの検討がよろしいかと思います。
ただ、現時点で少し考えを巡らせると以下のようなことが気になります。
(1)土地の評価が上がるため、純資産価額の評価が増加すること
(2)個人から法人への株式譲渡のように土地を時価評価する場合、ここではよいか悪いかの議論は別としてして、実務上簡易的に路線価の1.25倍していることがあります。
今回のように一度概算時価を出すことにより、むしろ路線価の1.25倍よりもこの概算時価の方が本来の取引価格に近いのではないか、となるように思います。
そうすると、今までの評価の数倍の概算時価での評価となると、純資産価額の評価が増加します。
(3)なにより一番大きな影響となり得ることは、上記(1)や(2)で土地の価格増加にともない、所有会社が土地保有特定会社に判定されることです。
これにより、先ほどの高い土地評価に加え、株式評価が、純資産価額しか選べなくなるため、株価にかなりの影響がでることが想定されます。
(4)とはいえ、マンション単位で保有している分には、評価の変更がないように見受けられるため、投資の単位によってその影響はまちまちとなります。
考えるだけで頭が痛くなる問題です。この通達改正の流れはしっかり追っていく必要がありそうです。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
ついに海外の旅行者の方に英語で道を聞かれました。
英語の勉強を始めてすぐ、コロナになり町から旅行者の方が消え、むしろその方が普通に感じ始めていました。
今であれば、英語でも道の質問であれば、理解はできますが、むしろ肝心なその場所がわからないということがあるんですね…。
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