実践!事業承継・自社株対策
ストックオプションの税制適格要件【実践!事業承継・自社株対策】第157号
2023.07.13
Q 当社は将来的には上場を目指していこうと考えております。そのため今般、ストックオプションを発行しようと考えておりますが、税制適格で発行できればと思います。
税制適格の場合、課税はいつ行われるのか、また、その要件について教えてください。
A ストックオプションとは、取締役や従業員があらかじめ決められた期間内に、あらかじめ決められた価格で、自社の株式を購入することができる権利です。
会社の業績向上により、ストックオプション付与時よりも株価が上がっていれば、低い権利行使価格で自社株を購入することができます。
通常、ストックオプションは、無償で取締役や従業員に権利が付与されます。
この権利が付与された段階では課税は発生しません。
ストックオプションの権利を行使して自社株を購入したときに、原則として行使時の株価と購入価格(=権利行使価格)との差額(安く買えた部分)が、給与所得として課税されることになります。
税制適格ストックオプションの場合には、この権利行使時の給与課税が行われません。
売却したときに、売却価格から行使時に払い込んだ額を差し引いた株式譲渡益に課税されることになります。
すなわち、売却時まで課税が猶予されることになります。
また、累進税率の給与課税ではなく、一律20.315%での譲渡益課税となるため、税金的にも優遇されています。
税制適格の要件としては、まず付与対象者は自社の取締役や従業員等であることです。
ただし、大口株主やその親族等は除かれます。
権利行使期間は、付与決議の日から2年経過後10年以内です。
ただし、2023年税制改正により、設立5年未満の非上場会社が、2023年4月1日以後に付与決議をするものについては、権利行使期間が15年まで延長されました。
さらに、ストックオプションは無償で発行されること、
年間の行使価格の合計額が1,200万円を超えないこと、
1株あたりの権利行使価格は、契約締結時の1株当たりの価格以上であること、
ストックオプションの譲渡が禁止されていることなどがあります。
その他にも要件はありますが、主なものは以上です。
要件が多いので、よく検討をして社員のモチベーションアップにつながるような制度を作っていただければと思います。
《担当:税理士 北岡 修一 》
編集後記
昨今、信託型のストックオプションについて話題になっていますが、税制適格と同様に給与課税が猶予されるとの解釈が覆され、給与課税・源泉徴収が必要とのことです。
これを活用した制度を作っていた会社は、その対応が大変なようですね...。
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